富田克也監督最新作「典座 TENZO」がカンヌで上映されるまでの縁
2019年10月5日 23:00
[映画.com ニュース] 第72回カンヌ国際映画祭の批評家週間に特別招待された、空族・富田克也監督の最新作「典座 TENZO」の公開記念舞台挨拶が10月5日、都内で行われ、富田監督とプロデューサーで出演者の倉島隆行氏、河口智賢氏が来場した。
「サウダーヂ」「バンコクナイツ」で知られる映像制作集団「空族」のメンバー・富田監督の最新作は、道元禅師が遺した「典座教訓」と福島と山梨に生きる2人の若き僧侶の苦悩を軸に、 3・11以降の日本における仏教の意義、そして信仰とは何かを探求している。
本作は、富田監督のいとこである河口氏が副会長を務めていた(オファー当時)全国曹洞宗青年会からの「日本の曹洞宗を知ってもらえるような内容の作品を作ってほしい」という依頼をもとに製作された。「最初はプロモーション的な10分くらいの作品でと言われていたんですけど、そこから短編映画にしてほしいと言われて。その後、曹洞宗内の檀家さんたちに、予想以上の寄付をいただいたので、もっと長い作品が作ることも可能になった」と、富田監督は経緯を説明。河口氏も「まさかいとこと一緒にここに立つことになるなんて。夢にも思っていなかった。ご縁だなと思います」と感慨深げな様子をみせた。
倉島プロデューサーが映画を作ろうと思ったきっかけは、学生時代の同級生ががんを患ったことがきっかけだという。見舞いに行った際、末期がんだった同級生から「仏教ではわたしの環境、つらさはどういう風に救ってくれるんですか?」と尋ねられたそうで、「いろいろな修行を体得したつもりだったんですが、目の前にいる人の苦しみに対して何も出来なかった。そんな無力感から、フランスのニースの近くのお寺に入りました。そこの近くにカンヌがあるんですが、引き寄せられるようにカンヌの港で海を見ていたら、将来ここに帰ってくるんじゃないかと、予言というか、メッセージがあったように感じたんです」と述懐。そしてその後、河口氏の「いとこに映画監督がいる」という言葉から縁が深まっていった。
一方の富田監督は、倉島プロデューサーからことあるごとに「カンヌの短編部門に出しましょう」と発破をかけられていたことを振り返り、「だからカンヌ、カンヌと言っていたんですね」としみじみ。「カンヌなんてそんなに簡単に行けるものでもないし、そういった説明もなかったので、お坊さんに連呼されているうちに『カンヌのために映画を作っているわけじゃない。どうせ落ちるだろうし、(出品にも)お金がかかるから、出したことにしてしまえ』と思っていたんですけど、(倉島プロデューサーに)バレちゃって」と笑った。結果的に選出されることとなり、「カンヌに行けちゃったんですよね。人を動かして、成就するのはすごいなと思いました」としみじみ付け加えた。
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