2011年に引退を表明したタル・ベーラ監督が来日!その理由は?
2019年9月14日 23:50

[映画.com ニュース] 「ニーチェの馬」「ヴェルクマイスター・ハーモニー」などで知られるハンガリーを代表する巨匠タル・ベーラが9月14日、伝説の傑作「サタンタンゴ」(1994)の4Kデジタルレストア版公開に合わせて来日。都内で会見を行った。
「サタンタンゴ」は、2011年の「ニーチェの馬」を最後に56歳で映画監督からの引退を表明したタル・ベーラ監督が、1994年に発表した作品。準備に9年、撮影に2年、そして完成までに4年の歳月をかけた7時間18分におよぶ長編大作だ。経済的に行き詰まったハンガリーのある田舎町を舞台に、1年半前に死んだはずのイリミアーシュが帰ってきたことから起きる村人たちの戸惑いを12章構成で描き出す。
本作は94年のベルリン国際映画祭フォーラム部門でワールドプレミア上映され、独創的な作品に与えられるカリガリ賞を受賞。それから25年後、の今年の同映画祭フォーラム部門では、4Kデジタル・レストア版が初披露。その後も世界各国で上映され続けている。
「この映画は世界中で上映されているが、奇妙なことに、どこの国でも、肌の色や文化、宗教の違いなどに関係なく、同じように受け止めてくれている。この作品のゴールは、人間に対する本質的な問いかけであるが、見た人はそれを理解してくれているんだ」と語るタル・ベーラ監督。「僕はアーティストじゃなくて労働者だ。観客が観ているものと分かち合わないといけないと思っている。でも25年という歳月がたっても、モノクロのクソみたいなものを受け止めてくださっているのはありがたいことだ」と続けた。
さらに、今回は4万フィートにおよぶ35ミリのオリジナルネガフィルムを4Kスキャンし、300時間以上かけて傷や汚れを取り除いた。そのことについて「今まで誰にもデジタル化を許可していなかったが、25年たったので、やってみようということで着手した。今回は自らフィルムを1コマずつチェックした。どうしてもデジタルだと出来ないこともあるが、それでもだいぶフィルムに近い、ベストな近似値が出せたと思っている」と自負する。
タル・ベーラ監督といえば、11年の「ニーチェの馬」を最後に56歳という年齢で映画監督からの引退を表明している。その理由について「理解していただきたいのは、自分はほとんど40年以上、映画監督として作品を手がけてきたということ。最初に作った作品が22歳の時であったが、1作ごとに新しい問いかけが生まれ、映画をより深く掘り下げていき、自分の映画的言語を見つけてきた。だけどもう言いたいことは言い尽くしたから、自分が見つけた映画的言語を繰り返して作品を作るという理由は、自分には見つけられなかった。だからそれは過去のものとして扉を閉めたということだ。映画監督をやることで、華やかなレッドカーペットや、素敵なホテルに泊まるという成功を手に入れられるが『それは何のため?』という思いがある。まだまだクリエイティビティではやりたいことが別にあるし、自分が年を重ねるごとに、自分が退屈して落胆するのを見たくない。ブルジョアな作家だとも思われたくない。ファッ○・オフという気分だね」と笑ってみせた。
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