「ジョーカー」ホアキン・フェニックスに絶賛の嵐 過去作と比べてもはるかにダーク
2019年9月2日 11:00
[映画.com ニュース] 現在開催中の第76回ベネチア国際映画祭で8月31日(現地時間)、バットマン・シリーズのスピンオフである「ジョーカー」がワールドプレミアを迎え、早くも主演のホアキン・フェニックスのアカデミー賞候補がバズにのぼる大きな反響を巻き起こした。トッド・フィリップス監督の本作は、ジョーカーを主人公に伝説のヴィランがいかに誕生したかを描く。
フィリップス監督は会見で、ジョーカーの出自がコミックではっきりと描かれていないため、比較的自由に創造することができたことに触れ、「他のDCコミックの映画化とは異なるアプローチがしたかった。ルールなし、限界なしと決めて、ホアキンと密に話し合って、撮影中ですら脚本は変化していった。完璧に狂気にたどりつくまで、お互いプッシュしあったんだ(笑)」と語った。
フェニックスは、ジョーカーの特徴であり、特に本作ではバリエーション豊かな笑いが出てくることについて、フィリップス監督から「笑いのオーディション」があったことを明かした。また役作りに関しては「まず体重を落とした。それから精神的な面の役作りをした。彼の中にはさまざまに異なるパーソナリティがあって、それを表現することに惹かれたんだ。役作りのひとつとしてジョーカーの日記を書き始めたのも、すごく役立ったよ。結果的にそれは、映画のなかで大切な要素になった」と説明する。
物語は、ゴッサム・シティのスラムで病弱な母親の世話をしながら道化師を目指すアーサー・フレック(ジョーカー)が、度重なる暴行を受けて精神的に追い詰められるなか、自身の暗い出生の秘密を知り、ついにジョーカーとして目覚める様子を描く。過去のシリーズと比べても、はるかにダークでバイオレントだ。社会の底辺に生きる人間が悪に目覚める過程は、フェニックスの神がかった演技によって、なおさら悪夢的インパクトを放つ。
「救いがなさすぎてシニカル」という声もあったものの、現代社会を反映したかのような内容とその圧倒的な完成度により、絶賛された。(佐藤久理子)