「BNK48」ドキュメンタリー手がけた監督が打ち明ける、タイの映画興行事情

2019年7月30日 10:00

ナワポン・タムロンラタナリット監督
ナワポン・タムロンラタナリット監督

[映画.com ニュース] 国際交流基金アジアセンター主催による「響きあうアジア2019」プロジェクト。7月3~10日で開催された特集上映&シンポジウム「東南アジア映画の巨匠たち」は、公益財団法人ユニジャパン(東京国際映画祭=TIFF)がアジアセンターとの共催イベントとして大盛況の内に幕を閉じた。昨年のTIFFで上映されたタイのアイドルグループのドキュメンタリー「BNK48: Girls Don't Cry」で話題を呼んだナワポン・タムロンラタナリット監督が、本イベントにも参加。日本でもCMを手がけたこともある監督に、映画界におけるタイと日本のコネクションや、東南アジアにおけるタイ映画の状況を聞いた。

――監督は日本をよく訪れているそうですね。

ナワポン・タムロンラタナリット「今回は仕事ですが、休暇でも東京に来ていますし、外国の中で一番なじみのある好きな国なんですよ。休暇で日本に来たときは、タイでは見られない展覧会やギャラリーに行くのが常です。バンコクは東京ほどカルチャーがないですから」

――そうですか? バンコクほどの大都市だったら東京と同じくらいかそれ以上ありそうですが。

ナワポン「大きく違うのは本ですね。紙の書籍や雑誌は少ないんですよ。それに比べて東京は書店に行くと山のように本がありますから。それに、東京ではいつも何か新しいことが起きている、という印象があります」

――日本の映画はどういう印象ですか?

ナワポン「もっとも私が影響を受けたのは、1990年代~2000年代の日本映画。岩井俊二監督や是枝裕和監督の作品です。タイでは、タイ映画のほかは主にハリウッドの大作が上映されているんですが、それらばかりを見ていたとしたら、私は映画を作っていなかったでしょうね。彼らの作品のように、大規模な作品でなく、小規模、もしくはインディーズでも映画を作れて、公開する場所がある点では、日本は非常に恵まれている環境だと思います」

――バンコクにはミニシアターは? ほとんどがシネコン化していますよね?

ナワポン「そうなんです。だから、インディーズの映画を上映できる映画館は非常に限られています。しかも、配給会社もヨーロッパやアジアの独立系作品は買い付けしないから、日本のように世界各国の映画がいつでも見られるという環境はありません。タイで配給会社のついていないインディーズ映画の場合は、直接映画館と上映交渉をすることが多く、私の作品もそうして直談判をして上映してもらっているんです。でも、今はいい時代になりましたね。SNSがあるので、上映館が決まったらSNSで拡散してもらって、観客動員につなげることができるようになりましたから。ほんの10年前くらいは、劇場は決まってもお知らせする手段がなかったので、非常に厳しかったんですよ」

――当時の宣伝はどのようにしていたんでしょう?

ナワポン「主にポスターと看板ですね。街中に掲示しましたが、骨の折れる作業です。今は映画に興味を持ってくれた人に、直接SNSで呼びかけることができるので、とても助かります。長編デビュー作はそうやって公開しました」

――ミニシアターの数はどれくらいなんでしょう。

ナワポン「バンコクには3つくらいかな。本当に少ないんですよ。他の国はどうなっているか分からないけど、どの国も減少傾向にあるのは間違いないでしょうね」

――日本も淘汰されつつありますね。

ナワポン「それでもいい劇場にはいいお客さんがついているから、残っていますよね。しかも残っているもの同士で競争もあるから、とてもいい状況だと思います。バンコクはそもそも数が少ないから競争にならないんですよ(笑)。競争にならないと、サポートもしようがないんで」

――00年代にアクション映画やホラー映画などのジャンルで大きなピークを迎えましたが、現在のタイ映画界はどんな感じなんでしょうか?

ナワポン「よく軍事政権下ゆえに製作が厳しくなっているのではと言われますが、それよりもおそらく経済的な理由で00年代より市場規模が小さくなっているように思います。一般市民が映画を見る本数は、1カ月に1~2本程度なので、インディーズ映画にまで多くの人は訪れませんね。それに、この数年で大きく変わったのは、娯楽の選択肢が多様化したことでしょう。Netflixをはじめとする映像配信やゲームなど、ティーンの娯楽がより生活に密着し、手軽になってしまったことで、映画館の動員が少なくなっている印象があります」

――監督の最新作「ダイ・トゥモロー」は、非常にユニークなとらえ方で、人生の終わりを多角的にとらえていますよね。この作品を作ろうと思ったきっかけは?

ナワポン「死って誰にでも必ず訪れるものですし、いつどこで起こるかは分かりません。特別な誰かだから何か特別な死が、ということもありませんし、どんな人でもある日突然に訪れるもの。死というものをできるだけ当たり前のこととして描きたいと思ったことがきっかけです。なので2012~17年の間に起きたニュースや私の経験、聞いた話をもとにして、人が死を迎える前の日をオムニバスにしました」

――前作は「BNK48: Girls Don't Cry」で、日本式のアイドルに迫りましたが、このカルチャーはタイではどのように受けとめられているんでしょう?

ナワポン「BNK48以前、日本のアイドルはニッチな存在でした。でも、彼女らがヒット曲を出したことをきっかけに、一気に認知度が上がって、今はタイの文化のひとつとして受け入れられています。ポピュラーミュージックとしては、K-POPが人気でしたが、ほぼそれと同等くらいに支持されていますよ。日本とタイの文化をつなぐ橋渡しのような役目を果たしていると思います」

なお、10月28日~11月5日に開催される第32回東京国際映画祭では、東南アジア映画を特集する「国際交流基金アジアセンターpresentsCROSSCUT ASIA #06 ファンタスティック!東南アジア」が行われる。今年のテーマは「ファンタ系」となる。

(映画.com速報)

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