「人生は複雑だけど希望を持てる」フランスで大ヒット、中年の危機を迎えた男性たちのシンクロ映画
2019年7月12日 16:00
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[映画.com ニュース]フランスで観客動員数400万人を突破し、第44回セザール賞で最多10部門にノミネートされた「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」が7月12日公開された。名優マチュー・アマルリックが演じる、うつ病がきっかけで会社を退職し、引きこもりがちな生活を送る主人公をはじめ、家庭や仕事や将来に不安を抱えるミッドライフ・クライシス(中年の危機)真っ只中の男性陣が、シンクロナイズド・スイミングに取り組み、次第に生きる希望を見出していく。来日したジル・ルルーシュ監督に話を聞いた。
フランスだけではなく、おそらく世界的な傾向だと思います。現代社会は、生活は快適になってきているのに、だんだん幸せではなくなり、孤独になっていきます。幸せな生活を送れない人への嫉妬が生まれたり、昔、カフェはおしゃべりを楽しむところだったのに、今は、それぞれがPCやスマホに向かって会話がない。それぞれが自分のコミュニティをつくって、その中だけで生きている。何かがあると、すぐに逃げ込んで壁を作って閉じこもってしまう。SNSなどのコミュニケーション手段は増えているのにもかかわらず、実際のコミュニケーションは減ってしまう。あるいは一方的になっている気がします。経済的にも厳しくなっているし、宗教を逃げ場にしている人もいるでしょう。でも、こういう時代だからこそ、お互いを思いやったり、分かち合うことで、それぞれが希望を持てるということを描きたかったのです。
これまで俳優として様々な作品に出ていますが、いろいろと矛盾を感じていて。やはり、人が作った作品のなかでは自分がやりたいことが十分にできないのです。そもそも自分が海水パンツで演技することなんか想像できなかったですし(笑)、監督としての仕事が多すぎて、絶対両立できないだろうと思っていました。俳優たちは、それぞれ好き勝手に動きますし、それをまとめなくてはいけない、今回は集中して監督業に専念しようとそう決めました。
それはなかったです。監督を経験がある人間は、いかに監督というものが孤独かをわかっている。だからこそ、逆に全てが上手く行ったような気がします。みんな、本当に全てをかけて集中してくれましたし、寒い中プールに入ってくれたりと、がんばってくれました。
私は真剣さのないコメディも、ユーモアのない真面目な映画も好きではありません。人間は、一日の中でワルツのように、喜び合って、楽しみあって、何かがあって泣いてしまったり、音楽が聞こえてきたら、急にノスタルジックになってしまったり、約束に来てもらえなくて悲しくなったり、様々な感情が同居していると思うのです。また、人間には喜びも悲しみも、メランコリックも楽観できる能力があるということを、この映画を通して共感してもらいたいのです。人それぞれに問題は抱えていると思いますが、それに真剣に取り組めば、人生は複雑だけれど希望を持てる、と、映画の前半に暗い部分を見せました。後半では、皆が団結することで、お互い分かち合い、理解しあって、最終的にハッピーになるということを見せています。
僕はポール・トーマス・アンダーソンのファンなんです。特に若い頃の作品が大好きで。フランス映画では、ジョンはミシェル・ゴンドリーとも仕事をしていますね。僕はジョンの音楽を思い浮かべながら脚本を書いたんです。絶対にこの映画音楽をやって欲しくて、オファーのメールをしたら、朝一の電話で、すぐにロスに来れる?と電話があり、飛行機に飛び乗りました。1カ月時間をくれと言われ、あの水のような音やテーマを作ってくれたんです。その後ロスで48時間一緒にノンストップで仕事をしたのは、幸せな経験でした。
「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」は、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開中。
(C)2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions
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