22歳の日本人監督が描いたキリストの映画が海外で高評価 「僕はイエス様が嫌い」
2019年6月6日 14:00
[映画.com ニュース] 第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を22歳の史上最年少で獲得し、その後も世界中の映画祭で数々の受賞を重ねている、新鋭・奥山大史監督の「僕はイエス様が嫌い」。公開初日のTOHOシネマズ 日比谷の舞台挨拶はソールドアウト、6月1日には全6回の上映が早朝に売り切れるなど、好調な興行スタートを切った。本作はミッション系の小学校へ転校した主人公の前に、願い事を叶えてくれる小さなイエス様が出現、学校や家庭での様々な経験を経て、少年の死生観を描く物語。自身の経験も重ね合わせたと語る奥山監督に話を聞いた。
「この作品を作っている最中は全く考えていませんでした。以前短編映画を作った時はそういう気持ちはありましたが、審査に通らなかったので、まずは日本で認められるものを作らなければと思って。海外の映画祭への応募の仕方はわかっていたので、通るとは思ってもみませんでしたが送ってみたんです。神様の捉え方が日本独特で、あえて宗教をまたぐような描写もしているので、海外の特にキリスト教圏の観客から『そうじゃないんだろう』と思われるんだろうな……なんて思って評価される期待もしていませんでした。意識していなかったのがよかったのかもしれないです」
「サンセバスチャンでは、広大な会場から、10メートルくらいある大きなキリスト像が見えるんです。正直、ここでこの映画を上映して大丈夫なのかな……と。ですから、そういった場所で最初に見てもらえたというのは、本当にこの作品にとって幸せだったと思います。大衆的なエンタテインメント映画でもキリスト教についての考えや、聖句が出てくる作品がたくさんあるので、現地の方は見慣れているんですね。だから、日本の若手監督が宗教を扱うということに対しての興味が大きかったようです」
「高校生の頃から、自分がミッション系の学校に通っていたことをベースにキリスト教をテーマにした映画を作りたいと考えていて、大学に入って就職が決まって、長編映画なんて作れなくなるなと思った時に脚本を書き始めました。幼稚園から大学までミッションスクールだったので、宗教の授業はたくさんありましたし。聖書を一通り読んでいるので、子どもの視点ですが、賛美歌や聖句の選び方などは季節や行事に合わせて自分が体験してきた通りに描いたので、クリスチャンの国でも違和感がなく、感じてもらえたのかもしれません」
「僕が子どもの頃の性格も、佐藤結良くんが演じた由来に投影されています。あまり話さなかったり、感情を表に出せず泣けなかったり……実際の結良くんは、とても元気な子なので、彼はとてもいい役者なんだと思います。70人くらいをオーディションして選んで、演出にもこだわりましたが、やっぱり結良くんがすごくリアルで演出にぴったり合ったことが、この映画が成立した理由です」
「キリスト教を知らない人にも楽しんでもらえるようにと、あの形を考えました。また、主人公が子どもですし、自分が一観客として見ても、なにかキャラクター的存在がいた方が面白いだろうと思ったのです」
「絵画や写真などからの影響が大きいですね。特にエドワード・ホッパーの絵が好きです。映画ではロイ・アンダーソンやジャック・タチのような構図に影響を受けています。照明で室内全体を照らすような画が好きではなくて。ワンシーンワンカットなので、どこから撮るかをかなり意識しました。デジタルで撮っていますが、フィルムっぽく見せようと工夫して。単にノイズを入れる方法もありますが、それだとインスタっぽく見えるので、グレーディングにはこだわりました」
「会社を辞めて映画に専念することもできるのでしょうが、そうすると視野が狭くなってしまうし、社会と触れる場にいたほうが自分にとってもいいのかなと。こういう風にこの作品が展開するとは思わなかったですし。現役でバリバリ映画を撮っている監督も、元会社員だったり、テレビやドキュメンタリー出身の方が多くいらっしゃいますよね。実現できたらいいなと思う企画もあるので、映画はこれからも続けていくつもりです」
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