「火口のふたり」柄本佑&瀧内公美、荒井晴彦の脚本から感じた“圧”と“時代性”
2019年5月8日 06:00
![男と女の“極限の愛”を描く](https://eiga.k-img.com/images/buzz/78480/2468a5053abc0ab7/640.jpg)
[映画.com ニュース] 直木賞作家・白石一文氏が男と女の“極限の愛”を紡いだ小説を実写映画化する「火口のふたり」の撮影が2018年夏に行われ、出口の見えない恋へと落ちていく男女を演じた柄本佑と瀧内公美、メガホンをとった荒井晴彦監督が取材に応じた。
小説「火口のふたり」は、白石氏が11年の東日本大震災を受け、改めて“生きること”を見つめ直し書き上げた作品。震災から7年目の夏。離婚、退職、再就職後も会社が倒産し、なにもかも失った男・永原賢治(柄本)は、旧知の女性・佐藤直子(瀧内)の結婚式に出席するため、故郷である秋田に帰省した。「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」。直子の突然の言葉をきっかけに、2人は再び体を重ね合う。一度だけと誓ったはずが、理性と体に刻まれた記憶の狭間で翻ろうされる賢治と直子。“身体の言い分”に身をゆだねることで、2人の愛は噴火する火口のごとく燃え上がっていく。
舞台となった秋田では、10日間に渡る撮影を敢行。報道陣に現場が披露されたのは9日目、海沿いの一軒屋で展開するシーンだ。あることがきっかけで夫から結婚式を延期にしたいという連絡を受けた直子が、自分の家で賢治と会話する――柄本と瀧内が、台本約4ページにも及ぶ長い会話を繰り広げてみせた。2人の息の合った掛け合いは、その光景を見ている者たちを“作品の世界”へと引き寄せてしまうほど、不思議な吸引力を放つ。テーブルを挟んで向かい合う柄本と瀧内から、長い時間を共に歩んできた恋人のような雰囲気が漂っていた。
![富士山の火口のポスターが物語のキーに](https://eiga.k-img.com/images/buzz/78480/91b01155fc89856a/640.jpg?1557210162)
柄本と瀧内は初共演、さらにキャストは“2人だけ”というシチュエーション。短い撮影期間のなか、濃密な空間を共有し作り上げてきたからこそまとえる一体感が、2人の間には出来上がっていた。柄本は撮影を振り返り「台詞ひとつひとつの言葉が難しくて、説明台詞も多く大変でしたが、念願の荒井脚本なので喋るのが楽しくて苦にはなりませんでした。詰め込む台詞量が膨大なので、毎日撮影が終了するとどっと疲れがでるんですけど、撮影自体が楽しいので終わるのが寂しいです」と胸中を吐露。一方、瀧内は「台詞は本当に多くて大変だったんですけど、食べる・飲む・セックスする・寝る、普通で日常的な事を描いている脚本と出合えて、それを自分が演じられる事が嬉しかったです」と喜びを噛み締める。荒井監督の望む“賢治と直子”を体現すべく、徹底して脚本と向き合っていた。
柄本「極端な話、明らかに32歳の僕が喋る台詞じゃないと思いました。原作の設定の30代後半~40代頭の台詞なので、喋るのは疲れるし、台詞の語尾や接続詞の作られ方が本当に大人だな、と思いました。また、脚本も“余計なことをしてくれるな、動きは俺が書いているのでそこだけ動いてくれ”という圧が強く出ているみたいで、脚本からすでに演出をされているような感じでした」
瀧内「劇中で『そしたら、どうするのよ』という何気ない台詞があって、何気ないけど、女性が強くなった現代というか、今を生きる女性を捉えたひと言だと私は思ったんです。荒井さんが今の時代を見つめて脚本に入れ込んだたくさんの台詞はカッコよくてイマドキで、とにかく綺麗。それをシンプルに、とにかくまっすぐに伝える事を心がけていました」
柄本、瀧内と初タッグを組んだ荒井監督。5歳の頃から知っている柄本については「佑は、やっぱり吸収がとても早い。ちょっと言うと、すぐにわかりましたとやって見せるし、抜群に理解力がある」と俳優としての素質を認め、瀧内に関して「絡みが多い脚本で、大変な役柄だと思うんだけど、役に挑戦したい強い気持ちがこちらへ伝わってきた」と告白。「それでいて、どこか全貌がわからない不思議な感じがして、奥深いところから底知れぬ何かを引き出せそうな予感があった」と内に秘めたポテンシャルに期待して起用を決めたようだ。
![監督3作目に挑戦した荒井晴彦氏](https://eiga.k-img.com/images/buzz/78480/5b0ffe694a1a7122/640.jpg?1557210167)
企画立案から撮影にたどり着くまでに要した期間は、6年。荒井監督は「(原作は)この世の終わり的な出来事が起こる中で、“身体の言い分に従おうじゃないか”という結論に達するのが、面白いというかわかりやすくて良いなと思いました。色々な世間的な価値観や倫理ではなく、“身体がしたい事をすればいいんだ”という、ある種の人間の自然を描いているところに惹かれました」と感じ、約5年前に白石氏から映画化の許諾を得た。
原作の舞台は福岡だったが、荒井監督は毎年夏に行われる「西馬音内盆踊り」の幻想的でエロティックな様にひかれ、設定を秋田へと変更。「この盆踊りを“男と女”をテーマにする作品に入れたいと、何年も前から思っていて、この作品でどうしても踊りの画を撮りたかった」「(白石氏は)秋田へ舞台を移したいと言ったら、『荒井さんに言われちゃしょうがないですね』とOKしてくれました」と明かしていた。
「火口のふたり」は、8月23日から東京・新宿武蔵野館ほか全国公開。R18+(18歳未満入場不可)指定。
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