ロマン・デュリス、俳優が社会問題や政治を語ることに仏国民は「寛容で、むしろ好意的」
2019年4月27日 06:00

[映画.com ニュース]「真夜中のピアニスト」「スパニッシュ・アパートメント」などで知られるフランスの人気俳優ロマン・デュリス主演作「パパは奮闘中!」が公開された。デュリスが演じるのは通販サイトの倉庫で働き、労働組合活動にも精を出し、同僚からの人望を集める主人公オリビエ。しかし、ある日突然妻が姿を消す。オリビエは仕事をしながら2人の子どもたちの世話に追われ、混乱しながら妻の帰りを待つ毎日の中、妹の手助けや妻以外の女性に癒しを求めてしまったり……。社会的に生きる職業人であり、父であり、ひとりの男性でもある人間らしい主人公を好演したデュリスに話を聞いた。
「オリビエは、観客の心をほろりとさせるようなタイプの人物です。仕事や子育てに奮闘している彼に共感が生まれ、観客になんとかその状況を打開してほしいと願われるような人物だと思います。彼の生活そのものにも、感動的な部分があります。撮影の前に工場見学をする機会があり、オリビエと同じ立場で働く方にお会いし、彼がどんな言葉を使い、どんな動きをするのかを学びました。そのほか、こういうタイプの企業のドキュメンタリーを見たり、本を読んだりしたことが役立ちました」
「また今回は、監督からアドリブで演技を求められました。このやりかたは、自分の俳優という職業のベースに立ち返らされた経験でした。共演者の言葉に耳を澄まさないと、どんなセリフが返ってくるかわからない。自分でも、常に創造しなくてはいけないのです。そういうことが俳優の原点だと気づかされ、とても新鮮な気持ちでした」

「自分で何かを計算するようなことはありません。自分では何かしようというプランはないけれど、出演作品を決める時は、いつも今回が初めての作品だという気持ちで臨んでいます。また、やはり自分が気に入った脚本、好きな作品でないとやらないということもあります。出来上がったときにヒットするかしないかは自分の関与する部分ではないのですが」
「あとは、こういった低予算で親密さのある作品と、もう少し娯楽的な作品に交互に出るということに気をつけています。やはり、作家性の強い作品にだけ自分を閉じ込めてしまうのはよくないとも思うのです。ただ、映画がヒットするかどうかというのは、フランスでもとても難しいこと。いろんな条件が重なって、予測できない企画だからヒットすることもある。俳優の自分としては、コンスタントに仕事をするなかで、ヒットしない作品もあるし、するものもある。そして自分は続けて仕事していきたいという思いは絶やさないようにしていきたいです」
「例えば、今起きている黄色ベスト運動については誰もが一家言持っていると思うのです。その時、俳優がなにか公に言うとしたら、どんな反応が返ってくるか、批判もあるだろうと考慮した上で、発言しなければなりません。そこを心得た上での発言となると思うのです。フランスでは、政治や社会問題、気候問題など時事について発言することは、好意的に受け止められています。内容に関してはフィフティフィフティで、もちろん同意しない人もいるけれど、問題意識を持っているという態度に関して寛容で、むしろ好意的。社会問題を扱う映画に出るということも、観客からも自分たちの身近な問題を扱ってくれているとポジティブに受け止められます。逆に、スターだから華美なエンターテインメント作品にしか出ないという人よりも、スターでもそういった作品に出る方が好感度は高いと思われる傾向があります」
「パパは奮闘中!」は、東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。
(C)2018 Iota Production / LFP - Les Films Pelleas / RTBF / Auvergne-Rhone-Alpes Cinema
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