ロッテルダム映画祭、ホテルの一室でゴダール新作を上映 幻の展示作品のビデオも
2019年1月31日 15:00

[映画.com ニュース]2月3日まで開催中のロッテルダム国際映画祭で、ジャン=リュック・ゴダールの新作「イメージの本」に関するスペシャルイベントが開催され、話題を呼んだ。
本作は昨年のカンヌ国際映画祭でワールドプレミアを迎え、映画祭側が特別に設けたスペシャル・パルムドールを受賞した。もっとも、ゴダールはカンヌのメインシアターのような大劇場で上映するよりは、もっと小ぶりの親密な空間で、音をダイレクトに体感しながら見た方が望ましいと考えていたようで、ロッテルダムの上映では彼の提案通り、ホテルの一室をさながらゴダールのホームスタジオに改造したかのように、大きなモニターと客席を取り囲む8つのスピーカーを設置して上映された。ペルシャ絨毯が敷かれた床には、ゴダールのパートナーであるアンヌ=マリー・ミエビル監督の著作「Images en Parole」も置かれた演出ぶり。本作のナレーションはゴダール本人が担当しているゆえに、なおさら自宅に招待されたかのような雰囲気に浸れる。
「5本の指のごとく、5章からなる物語」は、手のアップから始まり、人間がその手で犯した悲劇的な出来事:暴力、戦争、不和のテーマをヨーロッパとアラブ諸国の関連の歴史において紐解く。いつものように絵画や映画、テキストの引用とアーカイブ映像が、ゴダールならではのコラージュ手法で構築されている。
内容的にはやはり難解と言うべきか。さらにアラブの歴史に関する基礎知識もないと、いささか付いていくのが難しい。だが今回ロッテルダムでは、こうした観客の困惑、疑問を解消してくれるような講義も行われた。本作の目眩のするような映像のコラージュにおいてアーカイブのリサーチを手がけた、前衛、実験映画の専門家でもあるパリ第3大学の教授、ニコール・ブルネーズのマスタートークだ。その鮮やかな解説は、熱心なゴダールファンの欲求も十分に満たしていた様子だった。
さらにロッテルダムでは、2006年に開催されたパリのポンピドゥーセンターにおけるゴダール展で、実現させることのできなかったオリジナル案について、珍しくもゴダール自身が模型を使って詳細に説明するビデオ「Maquette expo (reportage amateur)」(2005)も公開された。おそらくは予算的な問題からか(ゴダールは何点か名画を美術館から借りたがった)、もともとのゴダール案はポンピドゥー側から却下され、実際に開催された展覧会は「似ても似つかないもの」として、ゴダールは辛辣に非難した。そのまぼろしの企画を、ミエビルの手によるカメラの前で、ゴダールが説明しているのである。詳細は省くが、9つの部屋に分けられたそれは、戦争、不和、文化的衝突、宗教、植民地主義といった彼の最近の関心を、やはり映像と言葉の引用、絵画も含めてさまざまなオブジェを用いて表現する試みだ。
「イメージの本」はこの春日本でも公開予定と聞くが、こうした補足的なイベントも同時開催されたら、よりゴダール映画が一般的なものとして広められるかもしれない、と思わせられた。(佐藤久理子)
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