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「居心地の悪さを抱えていく職業」小林薫が柳楽優弥に語った俳優論

2019年1月18日 13:00

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ダブル主演で擬似父子を演じる
ダブル主演で擬似父子を演じる
撮影/間庭裕基

是枝裕和監督に師事した広瀬奈々子監督のデビュー作「夜明け」が1月18日公開する。秘密を抱えた青年が、息子を亡くした初老の男と出会い、親子のような関係を築きながらも、次第に変化していく二人の心情をリアルに描きだす。是枝監督の「誰も知らない」でカンヌ映画祭最優秀男優賞を受賞した柳楽優弥と、小林薫がダブル主演で擬似父子を演じる。2017年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」以来の共演となるふたりが撮影を振り返った。

--擬似家族を描く作品は数多くありますが、今作のテーマや脚本を読んでの感想や役作りについてお聞かせください。

小林「監督自身も、震災後のコミュニケーションのありかたに悩むことがあったと聞いています。脚本は非常にわかりやすい部分と難しい部分がありました。テーマはシンプルですが、親子の話って答えが出ないんです。なにかが悪いとか、そういうことを言いたい映画ではないので、そうすると僕はどうやったらいいのかな、と考えることが難しかったです。父子問題は紀元前に『オイディプス王』が書かれた頃からあって、結局解決する術なんてない。これが、母と娘、父と娘だとまた違うのだろうけど、男同士のコミュニケーションや情の問題があって、それぞれ上手くいかない話。もっと気楽な映画もあったんじゃないかと思いますが、こんな難しいことを若い監督がよく撮ったな、と思いました」

画像3(C)2019「夜明け」製作委員会

柳楽「僕も難しさを感じました。監督が、描きたいビジョンが見えるような雰囲気で現場にいてくださったので、言葉で話す必要もないと思いました。クランクイン前に、僕が持っている生命力みたいなものを出せたらいいなと思いました。というのも、是枝さんの『誰も知らない』がデビュー作だった流れからの僕のキャスティングだと思ったので。僕はあまり難しいことを考えるのは得意ではありませんし、監督も口数が多い方ではなかったので、僕は自分が信じたもの、監督に言われたことをやるっていうことしか答えがないと思って臨みました」

--撮影時のエピソードで印象に残ったことはありますか?

小林「今回千葉県の旭市と匝瑳市を中心に撮ったんですけれど、毎日通える場所ではないので、ひと月じっくりいるしかない。そうすると、なんとなく現場の空気にずっとなじむ感じがするんです。それは、毎回自宅に帰る仕事とは、またちょっと意味合いが違ってくるんです。そこで、自分でも気がつかないところで化学反応を起こす可能性がある。それが楽しかったですね」

柳楽「以前大河ドラマで薫さんと数カ月ご一緒していたので、この作品は落ち着いて取り組めた感じがします。まるまるひと月千葉でのロケだったので、薫さんが鈴木常吉さんやYOUNG DAISさんと僕を食事に連れて行ってくださって。撮影していないところでのそういった雰囲気が映画に出ると感じたのでありがたかったです。現場以外のところでも、自然と演じるキャラクターっぽい感じでいられました」

画像2
--今回、擬似父子を演じましたが、俳優としての柳楽さんを小林さんはどう捉えましたか?

小林「役者同士って、そんなに他人に興味があるわけじゃないと思うんです。柳楽君も他の役者のことどのくらい興味があるのかなと思うんだけど(笑)。年齢も違うしね。僕は役以前、役者のありよう、そういうところで悩んでいる方かなと。でも、僕はそれは続けた方がいいと思うんです。僕らのような商売は、腰が落ち着いたらつまらなくなっちゃう。その妙な居心地の悪さ、それを抱えていく職業。そこを卒業しないで、しんどいけど続けて欲しいなと思いますね」

「僕らは死ぬまでこういう答えの出ないことをやっていると思うんです。自分も、最近、方法論も含めて正しいことがわからなくなってきました。もともとそういう風に生きてもないけど。逆に、『俳優とはこういうものだ』と言うような人がいたら、心の中で、『いいね、お気楽で』って思いますよ。決めた方が楽ですから。人を納得させるようなこと聞くと、いいなと思うと同時に皮肉が出てくる。何がいいのか正しいのかわからない、その居心地の悪さはずっと続くんじゃないかな。ずっと、考えていくしかないんだろうな。僕も柳楽くんも」

柳楽「満足と程遠いところに自分は居られているので、これからもがんばります」

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