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サラ・ドライバーが語るバスキアの思い出とジム・ジャームッシュとのエピソード

2018年12月21日 14:00

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サラ・ドライバー監督
サラ・ドライバー監督

[映画.com ニュース]20世紀を代表するアーティストのひとりとなったジャン=ミシェル・バスキアの没後30年を記念し製作されたドキュメンタリー「バスキア、10代最後のとき」が12月22日公開する。バスキアと同じ時代をNYで過ごし、ジム・ジャームッシュ監督のバートナーとしても知られるサラ・ドライバー監督が作品を語った。

--今回バスキアについてのドキュメンタリーを作った理由と、バスキアが有名になる前の10代の頃に焦点を当てた理由を教えてください。

「ハリケーンが2012年にNYを襲ったときのことです。79~80年、(バスキアの恋人だった)アレクシス・アドラーはバスキアと暮らしていて、彼女の寝室やバスルームや冷蔵庫のドアにバスキアが描いた絵がそのまま残っていました。彼女はとても凝縮された時間を彼と過ごしたのです。後に彼女は2人の子供を育て、バスキアの作品を銀行の貸金庫に入れていました。ハリケーンの洪水があって、パニックに陥った彼女は銀行へ走ったのです。そこにバスキアの60点の作品、1冊のノート、彼女が撮った150点余りの写真が見つかりました。私は彼女の部屋でそれらを見せてもらって話を聞いたわけです。もしかしたらバスキアという、ひとりのアーティストの人生を物語るウィンドウとして機能するのではないか、その時代、またはNYという街を体現するひとつのウィンドウとなるではないかと思って、この映画の着想を得ました。そして、ニューヨークという街で、みんながみんなでお互いに影響をし合いながら、作り上げていった環境がそこにすべてあった気がしたのです」

--当時のNYのムーブメントやカルチャーなど、映画の中の映像やバスキアを知る人たちのインタビューはとても刺激的です。

「面白いことは、これがバスキアの旅の軌跡でもあったことです。彼自身が大学としてストリートを選んで、自分が学び育つための環境を作っていった。アート界、ストリートだけでなく、バーナードやコロンビア大学の人たちとも付き合った。リュック・サンテは作家、アレクシス・アドラーは生物学者、ジム・ジャームッシュは映画作家であって、フェリース・ロザーはミュージシャンで哲学者、詩人でもある。リー・キュノネスもアンダーグラウンドのグラフィティ・アーティストだった。バスキアはグラフィティ・アーティストではなかった。ストリートポエットのような存在だった。彼が自分を形成し、選び取っていったことがとても面白いとポイントだと思いました」

--ジム・ジャームッシュ監督が、あなたに花を渡したバスキアに対して少し怒っているようなエピソードが登場します。当時は、お二人ともバスキアがこれほど有名になり、才能がる画家になると思っていましたか?
画像2(C)2017 Hells Kitten Productions, LLC. All rights reserved. LICENSED by The Match Factory 2018 ALL RIGHTS RESERVED Licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan Photo by Bobby Grossman

「私たちは現在という時間を生きていて、そこまで全く考えていなかったのです。でも、実際に彼がいつかアーティストになりたいと考えていたということはとても驚きで、素晴らしいことだと思います。アーティストの中には時折そういう預言的要素を持っている人がいる、J・G・バラードもそうですし、作品の中で現在にもリアリティを保っている、そして整合性を持っているということが作品に現れている人が必ずいると思います。それが30年後の今でも通用するという理由であると思います」

「私たちが『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を作っていた時も、そんなことは全く考えていませんでした。美術館などで上映する程度の映画だと思っていて、こんなにも大きな成功を収めるとは思っていませんでした。カンヌ映画祭に行って大きくなったことに驚きを持ちましたし、そこまでの野心も私たちは考えていなかったのです。ただ、作家のグレン・オブライエンはバスキアの『クリーン&ペイパー』という作品を見て、彼は偉大なアーティストになると言っていました。そういう先見性を持っていたというのは驚きです」

--日本でも今なおバスキアには注目が集まります。バスキアのアートの魅力はどこにあると思いますか?

「アートワークを行うことはとても大切であるということを、美術界の中で体現する存在でもあるのではないかと。そういう意味では、とても意義深いと思います。色の使い方、言葉の使い方がユニークで、それが現代にも通じる所以だと思います。30年前にも、今の時代にも意味があることですし、今も通用していることがとても素晴らしいことだと思います。彼が語りかけるものがあまりにも多くあり、現代にも通じているということだと思うのです。人種差別は当時もあったけど、今も同じ問題が残っている。警察の暴力なども、今も残っている。歴史は巡回するものです。テレビ的な政治への波及力の状況も変わらないし、B級映画の俳優だったレーガンが大統領になりましたが、今もあまり変わらないですよね。当時も冷戦ありましたが、現代にもあるわけですよね。それが今でも続いている。彼が語りかけた言葉が今も意味を持って伝わるというのが、彼の特徴でもあると思います」

--アートとビジネスについての関係をどのように思われますか? 先日のバンクシーの騒動など、アートが別の側面を持ってきている気がします。

「アートを購入してどこかにしまい込んでしまう、倉庫に入れてしまう状況を考えると悲しいです。アーティストの、作品を世の中に出したいという欲求を裏切ることになっている気がします。バスキアを日本のコレクターが買って、美術館に展示すると聞いていますし、それを実際に人に見せるというのは素晴らしい、良いことだと思います。しかしながら、多くの人が楽しむこともせず、絵をしまい込んで投資として考えているのはとても残念なことです。メトロポリタン美術館では、例えばいろんな楽器がしまい込まれてケースに入っています。それはもう生きている楽器ではありません。アーティストの存在、アートの意味が失われてしまうのです。若いアーティストには、見せるということを前提に考えて制作してほしいのです。それが作る欲求でもありますから。バスキアやジャクソン・ポロックら有名なアーティストは、投資として購入される状況もありますが、多くの若手の、無名アーティストの作品が買われる機会が、少なくなっているのは残念です」

バスキア、10代最後のとき」は、12月22日から、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

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