トロントで観客賞「Green Book」がチューリッヒで欧州プレミア!
2018年10月1日 14:00

[映画.com ニュース] 9月27日に開幕したスイスのチューリッヒ映画祭で、オープニングフィルムに選ばれた「Green Book」が上映され、ピーター・ファレリー監督と主演のビゴ・モーテンセンが駆けつけて喝さいを浴びた。
本作は一足早く開催されたトロント国際映画祭で観客賞を受賞し、一気にアカデミー賞候補に踊り出た。ヨーロッパではチューリッヒがプレミアとなっただけに、売り出されたチケットはあっという間にソールドアウトになった。
クラシックの黒人ピアニスト、ドン・シャーリー(「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ)と、1960年代に彼のアメリカ南部ツアーの運転手を務めたイタリア系の用心棒トニー・リップ(モーテンセン)の実話を映画化した本作。メガホンをとったのは、コメディで圧倒的な人気のあるファレリー兄弟の兄、ピーターだ。もっとも、今回はこれまでのコメディスタイルとは一味異なる。ジョークや笑えるセリフが満載というわけではなく、まったく対照的な主人公のふたりが醸し出すちぐはぐ感が自然な笑いをもたらす。なによりもアリとモーテンセンの、静と動の掛け合いが魅せる。しかも以前は静の役柄が多かったモーテンセンが、20キロ近く体重を増量し、しゃべり出したら止まらないブロンクス出身の典型的イタリア系アメリカ人に扮するのが新鮮だ。

会見に出席したファレリー監督は、「トロントに続いて今回ヨーロッパプレミアを迎えられたことにとても興奮しているよ。飛行機の中から、アルプスに囲まれたチューリッヒの美しい街並みを見ただけで、最高の気分になった」と語った。またイタリア系の主人公にモーテンセンを抜てきしたことについて、「彼が演じられないキャラクターなんていないだろう。実は僕の妻がビゴの大ファンでね。妻にどう思うかと聞いたら、目を輝かせながら賛成してくれた。ビゴは女性にも男性にも好かれる、希有な役者だよ(笑)」と理由を明かした。
タイトルのグリーン・ブックは、当時南部を旅する黒人のために存在したガイド・ブック。人種差別の激しい南部では、シャーリーのような天才ピアニストですら白人専用の場には出入り禁止であり、警官に嫌がらせを受け、時に身の危険に迫られる。現代にも通じるこうしたテーマを、本作はシチュエーションコメディの枠を借りて、笑いながらもシリアスに考えさせる。モーテンセンは「これはドキュメンタリーではなく、あくまでフィクション。でも笑いながらも観客に考えてもらえることはあるはずだ」と語った。
果たして本作がこれから始まるオスカー戦線のなかでどのようなポジションにつくのか、今後の展開から目が離せない。(佐藤久理子)
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