写真家・若木信吾氏、「顔たち、ところどころ」アニエス・バルダの手法に共感
2018年9月21日 16:30

[映画.com ニュース] フランス映画界の名匠アニエス・バルダとアーティストのJRが共同監督を務めたドキュメンタリー「顔たち、ところどころ」のトークイベントが9月20日渋谷アップリンクであり、写真家の若木信吾氏と編集者の鈴木芳雄氏が対談した。
映画は、88歳のバルダと、34歳のアーティストのJRという親子ほども年の離れた2人がフランスの田舎をトラックで巡りながら、市井の人々と接し、作品をともに作り、残していく旅の様子を記録したロードムービースタイルのドキュメンタリー。
現代美術に造詣の深い鈴木氏は、「彗星のごとく現れた」とTEDでの評価などJRのアーティストとしての功績を紹介し、「貧困や紛争の現場に自ら行って、大きな写真を使って注目を集める、クールでゲリラなアーティストの印象があった。グラフィティの人みたいにクールのままでもいいのに、この映画ではとてもいい人に見えた」と、アート活動の場で見せる雰囲気とは異なるJRの姿に驚いたと明かす。
「星影のワルツ」(07)、「白河夜船」(15)など、監督として映画作品も発表している若木氏。「アニエスはもともと写真家だし、映画の作り方も、仕組んでいるようで、そのままシチュエーションとして起こったことだけを撮って、編集で映画にしたという雰囲気がある。放っといて起こったことが真実だから、それを撮れば一番いいんだという。想像力ではなくて、何かが起こることを信じていて、それが成功している。それが写真家っぽいと思った」と、バルダの手法に共感していた。
また、映画に登場する市井の人とバルダの会話を挙げ、「写真を見る側は、想像力を使わないほうが長く見られるんです。想像すると頭の中の作業になって、勝手に物語を作ってしまう。そういうことが写真の美学だと思われているけれど、僕は何も考えずに写っているものだけを見ればいいと思っている。でも、作る側は真逆で、頭を使って想像しなければいけない。(映画に登場する)町の人たちは被写体になって、アニエスと想像力を共有していたと思う」と語ると同時に、想像力のない機械であるカメラを通して撮影することが大事であると述べ、「僕は、自分が想像したように撮れてしまうと面白くないので毎回裏切られたい。アニエスも自分が考えていないようなことが起こってほしいと思っていた思う。そこに見ている人も共感したのでは」と話した。
鈴木氏は、若木氏の意見に深く頷き「優れた写真家と仕事をすると向こうから事件が来るんです。森山大道さんや荒木経惟さんと仕事をしたときは、何かが起こっていた。梅佳代さんや川内倫子さんも写真に愛されていた」とさまざまなエピソードと共に振り返った。
「顔たち、ところどころ」は公開中。
(C)Agnes Varda-JR-Cine-Tamaris, Social Animals 2016
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