樹木希林さん最後の主演映画「あん」追悼上映開始
2018年9月21日 13:00
[映画.com ニュース] 9月15日に死去した女優・樹木希林さんの最後の主演映画「あん」(2015)が、本日9月21日から全国のイオンシネマなどで追悼上映される。あわせて新ビジュアルも披露され、樹木さん、共演の永瀬正敏、樹木さんの孫娘である内田伽羅が天を見つめる様子を切り取っている。
河瀬直美監督がドリアン助川氏の同名小説を映画化し、第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門のオープニングを飾った本作。刑務所から出所し、どら焼き屋「どら春」で働く千太郎(永瀬)のもとに、1人の老女・徳江(樹木)が雇い入れられる。徳江の作る粒あんがあまりにも美味しいと評判になったが、彼女がハンセン病を患っていたという噂が流れたことで店から去ってしまう。千太郎は彼女と心を通わせていた女子中学生・ワカナ(内田)とともに、その足跡をたどっていく。
本作テーマを広く伝えるべく、精力的にプロモーション活動を展開していた樹木さん。スポンサーがついていない市民上映会では出演料を受け取らずに舞台挨拶を行ったほか、東京・田端の完全バリアフリーシアター・シネマチュプキでは、目の不自由な方の手を握りながらトークを展開し、山手線に乗車し飄々と帰っていった。海外ではカンヌ映画祭や、ヨーロッパの俳優たちが参加を断ったというウクライナ・オデッサ国際映画祭(紛争地域で開催)などにも積極的に駆けつけた。
樹木さんは、本作公開時に「ドリアン助川さんの原作を読んで深く感銘を受けました」といい、「自分が全く知らない世界――閉じ込められた人生――を知るという機会に巡り会い、実際の元患者さん達にはすぐに会いにいきました」と明かした。そのうえで、「彼等から日々の生活のこと等を聞き、過去には隔離されて生活していた方々のことを全く知らないで今に至る自分を恥じました。厳しい時代だったであろう過去を持ち、今は当たり前に生きている彼等から、“生きている”という人間のたくましさを感じます。そういった事実をただ河瀬監督が悲劇的に描くのではないということ、わかっているので、安心して演じております」と話していた。
上映スクリーン数は90近く(予定やイベントも含む)にのぼり、多くの映画館や映画人が追悼上映を通じ、樹木さんの情熱と愛を継承していく。本作関係者一同は、「この度の樹木希林さんのご逝去の知らせを受けまして、『あん』関係者一同、驚きとともに悲しみにたえません。この映画における樹木希林さんは、撮影から宣伝、公開後のトークイベントまで、全身全霊を以って作品そしてそのテーマを広く今のこの世に知らしめようと精力的に動いてくださいました。深い感謝とともに心からご冥福をお祈りいたします」とコメントを寄せている。劇場や日程の詳細は、公式サイト(http://zounoie.com/theater/?id=an)に掲出中。
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