羽生善治竜王、瀬川晶司五段の功績を称賛「年齢は関係ないという道を作ったのは大きい」
2018年8月4日 09:00
[映画.com ニュース] 将棋の羽生善治竜王と、史上初めて奨励会退会からプロ編入試験に合格した瀬川晶司五段の対談が8月3日、東京・渋谷の東急百貨店将棋まつりで行われた。瀬川五段の自伝的著書を映画化した「泣き虫しょったんの奇跡」の公開記念イベントとして実現。2人は対局したことはないが同世代でもあり、羽生竜王が瀬川五段を質問攻めにするなど将棋談議に花を咲かせた。
将棋界で初めて国民栄誉賞を受賞した超エリートと、挫折からはい上がった雑草魂の初対談。映画の中でも、松田龍平扮するしょったん(瀬川五段)が「羽生先生は天才ではなく、超天才」というセリフがあるように、瀬川五段も「すごいプレッシャーです」とやや緊張の面持ちだ。
対談は羽生竜王の国民栄誉賞の話題からスタートしたが、本人は「首相官邸に入ることもなかなかないし、就位式などとも勝手が違う。緊張はしましたよ」と淡々。「それよりも、自分の人生が映画になることなんて、なかなか経験できないですよ」と褒め、場を和ませた。
「聖の青春」で東出昌大が羽生竜王を演じたことはあるが、「自分で自分の姿を見るのは不思議な感覚」と照れ笑い。「泣き虫しょったんの奇跡」も既に見ており、松田について「瀬川さんの人となりを深く調べて演じているんじゃないかと思いました」と感想を述べた。
そこから羽生竜王の“質問コーナー”がスタート。「人生そのものがひとつの作品になるのはどういう気持ち?」「撮影前に松田さんと話はしたの?」「三段から先は強くなったという実感はあまりないものだけれど、退会してアマからプロを目指している時に強くなったと感じたことはあった?」などと畳みかけた。
瀬川五段は恐縮しながらも、「もちろんうれしかったですが、話がきたのが昨年の春だったので、エイプリルフールじゃないかと半信半疑なところもありました」「将棋指導を週1回くらいでやっていたので、その時のしぐさなどを見られていたのかもしれません。姿形は違うけれど、内面を見て演じてくれたと思います」「奨励会の時は年齢制限のこともあって将棋が縮こまっていたけれど、アマで純粋に将棋を楽しもうと思ったら指し手が積極的になりました」と丁寧な受け答えで説明した。
そして、瀬川五段が「そういえば、まだお礼を言っていませんでした」と切り出すと、羽生竜王はきょとんとした表情。実は瀬川五段の編入試験の実現に向け周囲が奔走していた際、羽生竜王が将棋雑誌で「プロになるのに年齢は問わないでいいのでは」という趣旨の発言をしたことが追い風になったことへの感謝。「羽生先生のおかげです。その節は…」と頭を下げると、羽生竜王は「いえいえ、年齢は関係ないという道をつくったのは大きなことですよ」と、瀬川五段の功績を称えていた。
「泣き虫しょったんの奇跡」は、9月7日から全国で公開される。