「グッバイ・ゴダール!」ステイシー・マーティン、「ただの妻では収まらないところが好き」
2018年7月12日 17:00
[映画.com ニュース]ジャン=リュック・ゴダールの2番目の妻アンヌ・ビアゼムスキーの自伝的小説を「アーティスト」のミシェル・アザナビシウスが映画化した「グッバイ・ゴダール!」が7月14日公開する。ラース・フォン・トリアーの「ニンフォマニアック」の大胆な演技で注目され、今作でアンヌを演じるステイシー・マーティンが来日し、作品を語った。
ルイ・ガレルが演じる、当時37歳の天才監督ジャン=リュック・ゴダールと、パリの大学で哲学を学ぶ19歳のアンヌが恋に落ち、アンヌは「中国女」の主演を務めることに。ふたりは結婚し、次第に革命に傾倒していくゴダールとともに時代を駆け抜けたアンヌの知られざる日々をコミカルなタッチで描く。
「女優としての彼女は知っていましたが、物書きとしての顔は知らず、脚本とともに著書を読み始めました。私は、当時のアンヌが、自分自身が誰であるかを探し、今の彼女になる直前の姿がこの映画で捉えられていると考えました。だから、ある種の若々しさというものを保つことが重要だったし、自分なりにそれを見つけていかなければいけないなと思ったのです。彼女は好奇心でいっぱいだし、つらい思い出もポジティブな形で書いている、そういう資質を保ちたいと思いました。彼女はゴダールが一緒にいて正しい相手なのか、問い続けているところがあって、究極的にそうではないと判断する。それは、彼女が自分という人物に成長するからです。ただのゴダールの妻では収まらない、そういうところが好きです」
「外側の演技としては、コピー&ペーストにしないことが大事でした。この作品はゴダールの伝記映画ではなく、アザナビシウス監督によるコメディなので、伝記もの以上にしなければという思いがありました。私が演じたアンヌは、ビアゼムスキーその人というよりも、60年代のアイコン的な女性たち、それからゴダール映画に出ている女たち。そのコラージュのつもりで演じています。彼女が持っていた好奇心やオープンさを大事にしました」
「ああいう関係性は、あの時代特有のものだったのではないでしょうか。特にゴダールの映画作りは、恋に落ちた女性をカメラに収めるという、あの時代にとても特徴的なやり方だったのではないかと思います。私は、恋愛という関係より、役者と監督のコラボレーションに興味があります。監督がビジョンを持っていて、撮影監督や役者、いろんな人たちとともに映画を作っていく。その中で役者というのは、自分の人生観や解釈を役に反映します。言い換えれば、違ったものの見方、考え方をするふたりのアーティストがどういう風に出会って、同じ方向を見てものづくりをしていくのか、そういうところに興味があります」
「ゴダールについては、監督、アーティストとしてのイメージしか持っていませんでした。あらゆる様々な神話が彼の周りにありますが、彼が普通の人間である部分も持っていることを私たちは忘れてはいけないのです。今回、朝起きたときのゴダールの顔など、親密なシーンはルイ・ガレルといろんな話をしながら作っていきました。だから、この映画のゴダールは、誰もが知る天才監督ゴダールではなく、ジャン=リュックなんです」
「コメディとして、我々の挑戦は常にぎりぎりの一線を意識しました。実在人物がベースになってはいるものの、自分たちなりの映画にしなければなりませんでしたので。アザナビシウス監督は、既にある題材を咀嚼して違った自分の作品にするのです。今回の題材は聖なるゴダールということで、現実とフィクションの一線をどのくらい引くのかが重要でした。ある種、セミフィクションの中に身を置きながら、どうやってそれを自分たちの物語にしていくかを考えました」
「まずは監督ですね。脚本は何も描かれていないキャンバスのようなものです。誰が監督で、その題材をいかにリアルな映画にしてくれるか考えるとワクワクします。後はコラボレーションの仕方。どんなに仕事をしたい相手でも、役やタイミングが合わないこともあるので、合っていないときは、合ってないときっぱり言います」
「ヌードについては、物語にとって必要がなければやらないというポリシーです。今でも、不必要に脱いで欲しいと言ってくる監督と意見を闘わせることもあります。ただ、『ニンフォマニアック』は別です。あれは、物語にとって欠かせない要素で、ヌード特有の描かれ方が最初からはっきりしていたからです。かつて『女性は脱ぎやすいでしょ』のようなことも言われたことがあります。そういう時、女優は現場でもろい立場に置かれてしまいます。だからこそ、今、様々な女性の権利に関するディスカッションが前向きにグローバルでなされているのです。誰もがこういったことが起きていると認知し、何かを変えなければという必要性を感じさせるのは、すごくいい流れだと思っています。私はアーティストとして、全員が平等であるべきだと思うのです」
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。