寺島しのぶ、「オー・ルーシー!」で40代女性の悲喜こもごもをリアルに体現
2018年4月28日 08:00
[映画.com ニュース]平凡な日常を送っていた43歳の独身OLの主人公が、久々の小さな恋がきっかけで大きな変化に巻き込まれ、人生を変えていくさまをコミカルかつリアルに描いた日米合作映画「オー・ルーシー!」が公開された。本作で、インディペンデント映画の祭典、第33回インディペンデント・スピリット・アワードの主演女優賞にノミネートされた寺島しのぶが作品を語った。
ひょんなことから英会話教室に通うことになった節子は、アメリカ人講師ジョンにより、教室内では金髪のカツラをかぶり「ルーシー」というキャラになりきることを強いられる。この風変わりな授業によって節子の眠っていた感情が解き放たれ、節子はジョンに恋をする。しかし、幸せな時間は長くは続かず、ジョンは帰国してしまう。
日本人監督作品としては10年ぶりに、カンヌ国際映画祭批評家週間(第70回)で上映され、第33回インディペンデント・スピリット・アワードでは主演女優賞のほか、新人作品賞にノミネートされた。平柳敦子監督と対面し、監督の人柄に惹かれて出演を決めた。監督の人柄に惹かれて出演を決めた。「監督とは、色々なことが合ったんです。お互い歳が近く、子どもを育てていて、仕事をやっていく上でもがくこともある。そして彼女はハリウッドというところで生きようとしているたくましい女性。かといって、すべてがアメリカナイズされているわけではなく、日本の精神をきちんと持った方だったので、私の気持ちをわかってもらえました。とても相性が合ったんです。初めて私の演技を見たときに、『この人は絶対日本だけじゃだめ。こういう女優がいるっていうことを、この映画で世界に知らしめるから』って言ってくださって。ありがたいなって思いましたね」
日常に埋没し、華やかな生活や幸せな恋愛に縁のなかった主人公の節子。一方、奔放ではあるが、若いが故に、まだ地に足のつかない姪の美花(忽那汐里)ら、それぞれの世代の女性の生き方、愛や性をきれいごとにせずリアルに描いている。「節子のキャラクターは、ここまで言っちゃうか……みたいなことまで、監督とディスカッションしながら、創っていきました。私がやりたいことと監督がやりたかったことに、ブレがあまりなかったですね」
さらに、「共演者にも恵まれました」とハリウッドの中堅スター、ジョシュ・ハートネット、そして日本映画界をけん引する役所広司、南果歩、忽那汐里らとの共演をこう振り返る。「これは、役所さんが引き受けてくださらなかったら、成り立たない映画だと思うし、13年ぶりの共演は幸せな時間でした。果歩さんとも、こうやってがっつり姉妹役で演じることは初めてでした。果歩さんは、『こういう姉って嫌だよね…(笑)』とか、色々なアイディアがいっぱいでした。お互いが考えたことを出し合う大人の関係だったので楽しかったです。忽那さんもアメリカでオーディションを受けていて、20代ならではのスピリットがすごいと思いました。ジョシュは、ハリウッドスターなのに、ものすごく普通の心を持った素朴な人。彼も彼なりに、新しいジョシュ・ハートネットを見せようとがんばっていました。過酷な撮影の日もありましたが、インディペンデント映画らしく、みんなが挑戦していた現場でした」
映画は一人の女性の人生の変化を描いた作品だ。女優としてのキャリア以外に、人生の節目となった出来事を聞いた。「まさかフランス人と結婚しているとは思わなかった。でも、彼を見て、結婚したいって思っちゃったんです。当時はデートをしても、節子みたいに片言の英語しかできなくて、気持ちはあるんだけど、なかなか言葉では伝わらなかったこともありました。だから、私も彼に会っていなかったら、今とは違っていたのかな、と考えます。節子は、愛情表現が上手に出来なくて、違った方に行ってしまうのがまた良くて、楽しんで演じました。あのピンポン玉とカツラさえなければ、彼女はもうちょっとひっそり生きていたかも知れません」
「オー・ルーシー!」は、東京・渋谷ユーロスペース、テアトル新宿ほかで公開中。