チェン・カイコー監督×染谷将太、妥協を排して生み出した「空海」のエネルギー
2018年2月25日 12:00
[映画.com ニュース] 巨額の製作費が投じられた日中共同製作映画「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」。空前絶後のビッグプロジェクトを指揮した巨匠チェン・カイコー監督、海外作品初主演を飾った染谷将太、彼らの脳裏に「妥協」の2文字はなかった。比類なき才能がぶつかり合い、誕生した絢爛豪華な歴史絵巻。スクリーンから発せられる膨大なエネルギーが、相対する者をのけぞらせるに違いない。(取材・文/編集部、写真/間庭裕基)
ベストセラー作家・夢枕獏氏が執筆した「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(全4巻/角川文庫・徳間文庫)を原作にしたスペクタクル映画。遣唐使としてやってきた若き日の空海(染谷)が、詩人の白楽天(ホアン・シュアン)とともに、唐の首都・長安を揺るがす巨大な謎に挑むさまを描く。原作小説の長大なストーリーの核をとらえ「ハリウッドとは全く違う、東洋の雰囲気たっぷりのファンタジー」に仕立て上げたチェン監督。これまで手掛けてきた歴史劇に比べ、幻想的な要素が押し出されているが、その理由は物語の背景となった唐という時代にあったという。
チェン監督「(唐は)中国の長い歴史のなかでも、開放的かつ文化的に豊かな時代。様々な国の多種多様な人々が長安にやってきたことで、コスモポリタニズムの風潮が広がっていました。特徴としてあげられるのが、夢を追う詩人が大勢いたということ。私の考えでは『夢=ファンタジー』だったため、その要素は強くなっていきました」
役者として既に活動していた中学生時代、初めてチェン監督の代表作「さらば、わが愛 覇王別姫」に触れた染谷。「中学生ながら、かなりの衝撃を受けたんです。1週間ほどあまり寝れなくなってしまったほど。監督の口から自分の名前が出てくること自体、驚きだったので、今回のオファーは本当に光栄でした」と抜てきに感謝の念をほとばしらせる。チェン監督が染谷の才能に気づいたのは、山崎貴監督作「寄生獣」での芝居だ。同作の主人公・泉新一、全国各地で逸話を残してきた伝説の僧侶・空海、両者に共通する部分は見受けられないが、チェン監督が重視したのは「全く異なる人物を演じ分けられる」という染谷の資質だ。
チェン監督「空海は難度の高い役柄です。僧侶としての動作をきちんと把握しなければならない。非常に微妙な表現が要求されます。染谷さんは“目で物が言える”役者ですし、僧侶としての温和な部分を表す不可思議なほほ笑みも体現できる。中国では“謎のほほ笑み”と話題になっているんですよ。特に胡玉楼(妓楼)で披露している舞は、とても高尚で優雅です。空海という人物を表現するにはぴったりなシーンです」
10年の構想を経て、2016年7月31日~17年1月4日の約5カ月に及ぶオール中国ロケを敢行。主な撮影の場となったのは、約6年の歳月をかけて、東京ドーム約8個分の土地に再現された超巨大な長安の都だ。撮入前に見学に訪れた染谷は「ひとつの街が出来上がっていました。最早、セットだとは思えなかったんです。ここまで凄いスケールだと、驚くというよりも違和感がない。本当にその場所に存在している気がしていました」と振り返る。そして、細部にまでリアリティが貫かれたセットは、ある効果を生み出していた。
染谷「空海が住んだ西明寺へ向かうためには、車に乗って長安の街を抜けなければなりませんでした。そういうプロセスを経て、空海が住んでいた部屋に入ると、自然とその場に立てるんです。役者は想像力を必要とする仕事とされていますが、今回は余計な想像を必要としなかった。役柄の本質的な部分の想像に集中できたんです」
日本国内では吹き替え版のみの公開だが、染谷は全編を通じて、中国語でのセリフに挑戦している。「全てが難しかった」と前置きしつつ「特に苦心したのは喋りの早さ」だったという染谷。「中国の方が自分のセリフを聴いて、早く感じるのか、遅く感じるのかを気にしていました。シチュエーションによっては、セリフに感情を乗せるので色々なスピードで話さなければならない。どの程度のスピードで話せばいいのか、計算しながら演じるのはかなり難しかったです」と語ると、劇中では“相棒”として活躍するホアン・シュアンが「常にサポートしてくれた」と告白した。「今どのくらいの早さで聴こえるのかという点を探るための練習にも付き合ってくれました。食事面でも助けていただいたんです。宿泊している部屋にワインを差し入れてくれたりしたことも。本当に感謝しきれません」と胸中を吐露していた。
「中国語はひとつの漢字に対して、ひとつの音節。音節の組み合わせによって、長いセリフを言わなければならないですし、そこに演技を加えていかなければならない。非常に難しかったはずです」と述べたチェン監督は「そういう意味でも、染谷さんが演じた空海は、映画史上に残る名演技だと考えています」と絶賛した。念願のタッグを経て、巨匠からの惜しみない賛辞を得た染谷は「まず初めに撮影の日々を振り返ったんです」と完成した作品への思いを述べた。「『(自分は)幻のなかにいたんだ』『夢のなかにいたんだ』と思ったんです。勿論客観視できない部分もあるんですが、素直に感動しました。客観視できない自分をも飲み込んでいくようなエネルギーを感じたんです」と充実の表情を見せていた。
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