黒木華&樹木希林、奏でる演技のハーモニー 初共演「日日是好日」現場を語る
2017年12月28日 05:00
[映画.com ニュース] 森下典子氏が町の茶道教室に通い続けた約25年間にわたる日々を綴った人気エッセイを映画化する「日日是好日」の撮影現場が、このほど報道陣に公開された。師弟関係に扮した黒木華と樹木希林が取材に応じ、“茶道”と“人生”に向き合う日々を明かした。
大森立嗣監督がメガホンをとった今作。20歳の主人公・典子(黒木)は、従姉の美智子(多部未華子)とともに自宅近くの茶道教室に通い始める。師匠となる武田先生(樹木)の指導を受ける20数年間で、典子は就職、失恋、大切な人の死などを経て、お茶や人生における大事なことに気がついていく。
この日の現場は、神奈川・横浜市内の民家を改築したセット。あることがきっかけで失意に沈む30代の典子が、武田先生の前で集中力を欠いたことで叱責され、涙を浮かべるシーンが撮影された。黒木は8畳の茶室に入り、釜の前で正座した後に柄杓を握り込む。一方の樹木は釜の横に位置取り、「(柄杓を)もう少し優しく持てないの? 10年以上も稽古してるんだから、そろそろ工夫というものをしなさい」と立ち去っていく、という段取りだ。
あたかも“演技のハーモニー”を奏でているようだった。2人の共演は意外にも今回が初だが、コンビネーションはバッチリ。樹木は「優れた役者ですね。感じるもの、表情や声は、姿で出てくるものだから。いい役者さんが増えるというのは、いいですよね」と頼もしげで、その言葉に黒木は「恐縮です。樹木さんのセリフは、それこそお茶のようにフワッとあふれてくるものがあります。樹木さんが待ち時間に『自分でかっこいいものを選ぶ』と仰っていて。かっこいい女優さんで、私もそうなりたいと思っているので、『少しでも』と見て盗んでいます」と声を弾ませる。取材中、樹木のキラーパスに黒木が即座に反応するさまが度々見られた。さらに撮影の合間にはストーブに当たって女優論を交わしたり、住んでいる土地の話などで談笑する姿も印象的だった。
茶道はともに初挑戦。樹木は原作・森下氏との稽古に臨んだが、その上達速度は同氏が「あっと言う間に上手になっていくし、お手前が(実際の)武田先生に似ている」と舌を巻くほどだった。黒木も別の指導者と7日間稽古を積み、2日ほどで「もう教えることはないのでは?」とお墨付きを受けたそうだ。
ところが「形はスッと、らしくはできますが、真髄みたいなものは、長くやってみなければ得られない」と樹木。足の運びひとつとっても「1畳を移動しきる歩数の決まり」など、細かな作法が無数にあるだけに、抜きん出た表現力を誇る大女優といえど、先生役は“お茶の子さいさい”とはいかないようだ。黒木は「お茶をやっていると、その時間がとても豊かなんです」と切り出し、「映画を見に来てくださった方に、その2時間が人生の“静”や“動”のひとつになればいいなと思います。人生は、大きくても小さくても人生。誰かしらがハマったり、いろんな見方ができると思います」と願いを込めた。
また、茶室でのシーンが映画の大半を占めるため、セットや美術には相当の気合いが入っていた。プロデューサーの吉村知己氏いわく「セットは影の主役」。もともと空き家だった民家を改築し、庭側の壁をぶち抜いて茶室を増設した。また場面の四季がころころかわるため、その都度、建具や茶庭の草木を季節にあわせ入れ替える必要がある。シーンチェンジの声がかかるや、枯れ枝や夏用の葦戸などを抱えたスタッフ10数人が狭い廊下をめまぐるしく行き交うさまは、さながら「ホーム・アローン」の冒頭をほうふつさせた。
時間と手間と費用を惜しまず注ぎ込んだセットに、キャスト陣も口をそろえて称賛。樹木は「とにかく懐かしい感じが、日本人の誰もが持っているものにスッとハマる。お金がかかってないように見えますが、プロデューサーが涙出るほどお金をかけたそうですね」と明かし、黒木も「映っていないところでも、お菓子がちゃんと入っていたりするんです。そういうところがすごい」と芝居の助力になっていることを示唆した。
一方で樹木は、体調について「こんなもんだわね、ありがたいことに」といい、「私たちは生きてきたように死ぬんだから」と語るなど“希林節”は健在。所定の取材時間を超過しても「いいわよ、もっと質問して」と快く応じたほか、「私の後輩の主婦たちなんかは、みんな子育てが終わっちゃって、何もすることがない。お茶を習い事でやってもらいたいけど、奥が深いから簡単にはいかない。大概みんな、簡単なパチンコに行っちゃうわよね(笑)。なんとか(今作で)お茶のほうに手繰り寄せたい。パチンコから、お茶へ!」と仰天スローガンをぶち上げ報道陣を楽しませた。
そして樹木は、ある記者に筒状のハンドウォーマーを貸し「つけてみなさいよ。あったかいわよ」とすすめ、最後には一同を「寒いから気をつけてね」と送り出してくれた。現場を包む柔らかで心地よい空気が、余すところなく映画に反映されていてほしい。そう願うばかりだ。
「日日是好日」は11月20日~12月下旬に撮影され、2018年内に公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
北野武新作&アカデミー賞ノミネート「ニッケル・ボーイズ」アマプラで見放題配信! 「関心領域」「ミニオン超変身」「リンダはチキンがたべたい!」も
2025年1月30日 10:00
映画.com注目特集をチェック
ザ・ルーム・ネクスト・ドア
【死を迎える時、どんな最期を選びますか?】“人生の終わり”と“生きる喜び”描く、珠玉の衝撃作
提供:ワーナー・ブラザース映画
キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド
【この最新作を観るべきか?】独自調査で判明、新「アベンジャーズ」と関係するかもしれない6の事件
提供:ディズニー
セプテンバー5
【“史上最悪”の事件を、全世界に生放送】こんな映像、観ていいのか…!? 不適切報道では…?衝撃実話
提供:東和ピクチャーズ
君の忘れ方
【結婚間近の恋人が、事故で死んだ】大切な人を失った悲しみと、どう向き合えばいいのか?
提供:ラビットハウス
海の沈黙
【命を燃やす“狂気めいた演技”に、言葉を失う】鬼気迫る、直視できない壮絶さに、我を忘れる
提供:JCOM株式会社
サンセット・サンライズ
【面白さハンパねえ!】菅田将暉×岸善幸監督×宮藤官九郎! 抱腹絶倒、空腹爆裂の激推し作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
激しく、心を揺さぶる超良作だった…!
【開始20分で“涙腺決壊”】脳がバグる映像美、極限の臨場感にド肝を抜かれた
提供:ディズニー