J・C・ミッチェル監督が“パンク”なラブストーリーに込めた「解放と癒し」
2017年11月30日 13:30
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[映画.com ニュース] カルト的な人気を誇る映画「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェル監督が、刺激的にパンクアレンジされた“ボーイ・ミーツ・ガール”映画「パーティで女の子に話しかけるには」を完成させた。異星人の少女と人間の少年が繰り広げる、斬新でありながら普遍的な恋愛模様が、すべての観客を「異性が“異星人”に思えたあの頃」(原作者ニール・ゲイマン)へといざなう。(取材・文/編集部)
映画は、英SF作家であるニール・ゲイマンの同名短編小説を原作に、ミッチェル監督とフィリッパ・ゴスレットが脚本を共同執筆。1977年の英ロンドンを舞台に、遠い惑星からやって来た美少女ザン(エル・ファニング)と、内気なパンク少年エン(アレックス・シャープ)の恋の逃避行を描いた。エンは、偶然潜りこんだパーティで、大好きなパンクミュージックやファッションの話に共感してくれるザンとたちまち恋に落ちる。そんな2人に許された自由時間は48時間。エンとザンは大人のルールに反発し、一緒にいるために危険で大胆な行動に出る。
ミッチェル監督は、ザンを演じたファニングのことを「もともと大好きだった」といい、「『ジンジャーの朝 さよならわたしが愛した世界』の彼女は本当に抜きん出ていたし、リアルに存在感を感じた。実際に会うと、もう彼女しかいないと思ったよ。エイリアン的なフレッシュさとユーモアがあって、自分の気持ちにすごくダイレクトにアクセスできる。人柄も素敵」と大絶賛。「ザンは、初めてムービースターとしてのエルの力量を、余すことなく見せられた役だと自負しているよ。一緒に仕事ができて光栄だった」
ロックミュージシャンが主人公だった「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」に対し、今作でフィーチャーしたのは“パンク”。「1950年代のロックが持っていたエネルギーが失われて、商業的なものばかりになった。それに対する嫌悪感や、夢も希望もない若者たちの感情から生まれたのがパンク」と語り、音楽のジャンルとしてだけではなく、文化としてのパンクを若者の恋愛に絡ませた。「僕の作品すべてに共通しているのは、音楽とユーモアがあって、アニメやマンガという視覚的な要素があるところ」「解放と癒しという両方の側面がなくてはならないんだ」と映画製作へのこだわりを明かす。
「(劇作家の)サミュエル・ベケットやハロルド・ピンターも好きだけれど、結局は自分が10代のときに好きだったものに立ち戻るんだ。デビッド・ボウイみたいなグラムロックに大ハマりして、彼らの音楽を聞きながら育った。ゲイだとカミングアウトするまで“パンクであること”が理解できなかったんだ。自分の肉体も、自分のなかにある女性性も男性性も怖かった。でも、80年代でカミングアウトすると開放された気持ちになって、少しずつパンクにひかれていったね」
最初はザンをアメリカからの観光客だと思っていたエンは、途中でザンが異星人であることに気が付く。いわゆる“普通”の恋愛物語であれば衝撃的な展開だが、今作ではそれが恋の障害になることはない。米軍基地で生まれ、イギリス人の母を持ち、自らを「インターナショナリスト」と呼ぶミッチェル監督の思考を知れば納得だ。「僕は人種差別というものを理解できないんだ。スケープゴートを求めたり、誰かを下に見たいという気持ちになる人がいたりすることは知っているけれど、それを理解することはまったくできない。それが、僕がパンクを愛する理由のひとつだよ」
ある大儀のために大きな決断を迫られるザンと、ただずっと地球にいて欲しいと願うエン。2人は涙して葛藤することになるが、終盤のシーンでファニングが見せる演技は、それまで天真爛漫に振舞っていた少女が大人になる瞬間を見せるようで力強い。ミッチェル監督は、「具体的に2人の精神年齢に差を付けようと思ったわけじゃない」といいながらも、女性が持つ潜在的な“責任感”については意識せざるを得なかったようだ。
「女性は、生物的な意味で母親になる可能性があるから、若くして責任について考える必要に迫られたり、長期的にものごとを考えたりするのかも知れない。だからこそ、恋愛関係において『私たち結婚するの? しないの?』みたいなことを早くに望むところがあるのかも。それに比べて、男は短期的なビジョンしか持てないこともある。みんな大人になるはずなんだけど、子どものままの男もたくさんいるからね(笑)」
「パーティで女の子に話しかけるには」は、12月1日から東京・新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開。
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