久松猛朗FD、TIFF30回の節目に多彩なプログラムで動員増実現「一歩を踏み出せた」
2017年11月8日 16:00
[映画.com ニュース] 第30回東京国際映画祭の劇場動員数は6万3679人。共催・提携企画も合わせれば20万人以上が詰めかけた。会期中に台風22号が通過するなど天候不順があったことも鑑みれば、劇場動員が昨年比で3000人以上もアップしたことは大きな実績といえる。今年4月にフェスティバル・ディレクター(FD)に就任した久松猛朗氏は、いかにして節目の大会のかじ取りを行ったのか。
「映画を観(み)る喜びの共有」「映画人たちの交流の促進」「映画の未来の開拓」――久松氏は就任に際し、長期的な視野に立ってこの3つをビジョンとして掲げた。その上で、「十分ではないけれど、一歩を踏み出せたかなという手応えのようなものは少し感じています」と自負する。
日本アニメの特集や「日本映画スプラッシュ」など、近年に創設された部門に加え、TOHOシネマズ六本木ヒルズの6スクリーンで別々のテーマのオールナイト上映「ミッドナイト・フィルム・フェス!」、ミュージカル映画の歴史をたどる「トリビュート・トゥ・ミュージカル」、無料上映だが隣接する六本木ヒルズアリーナのビジョンで過去の出品作からセレクトした名作30本の上映「Cinema Arena 30」などを新設。映画を観る喜びの共有のため、上映本数は昨年比25本増の236本となった。
「プログラムの多様性によって満席や売り切れ間近という上映が多く、全体的に埋まっていたようです。TOHOシネマズを見に行っても人の出入りが多くて、にぎわっている映画館という印象を受けました。アリーナでの上映も、寒い中でも皆熱心に見ているんですよ。台風が通過した日曜日は『タイタニック』だったのですが、けっこうな数の人が毛布を借りて一生懸命見ている。映画の力はすごいなとあらためて感じました」
交流の促進に関しては、六本木ヒルズのシネマカフェのパス規制を緩和したのをはじめ、大屋根プラザやアリーナにもミートポイントを設置し、出会いの場を創出。久松氏自身もヨーロッパからのゲスト陣に請われ、カラオケ店に招待したこともあったという。
「パーティは、『こんなにゲストが来ているのは初めてですよ』という声が聞こえるくらい参加率が高かった。ちょっと予算はオーバーしまたけれど、そうやってエンジョイしてくれるのは大事なこと。ヨーロッパのゲストといっても数カ国の人がいるし、東南アジアの人もいた。映画そのものも大事ですが、トータルでの雰囲気で行って楽しかった、また行こうという体験ができることも重要なので、そこもステップアップしている気はします」
一方で、ゲストの華やかさに欠けた面は否めない。特に海外のビッグネームが少なく、オープニング前日に同じ場所でハリソン・フォードが参加して「ブレードランナー2049」のジャパンプレミアが行われたのは皮肉だった。だが、久松氏はあくまで前向きだ。
「大物といわれる人に来てほしいのはやまやまですが、これは配給会社との関係やプロモーションのスケジュールの問題もある。確かに興行であればそういう方の力を借りなければいけない部分もあるけれど、映画祭で見いだした人を世の中に紹介していくのも我々のミッションのひとつだと思っています」
その思いを具現化したのが全出品作を対象に若手俳優を顕彰する「東京ジェムストーン賞」の創設だ。ジェムストーンは原石の意味で、記念すべき第1回は松岡茉優、石橋静河、フランスのアデリーヌ・デルミー、マレーシアのダフネ・ローという4人が受賞。「たまたま女優さんばかりになってしまいましたが、彼女たちが世界で仕事ができる契機になってくれればと思います」と未来の開拓につながることを期待する。さらに、河瀬直美監督や坂本龍一らによる若手映画人に向けたセミナー「TIFFマスタークラス」も開催し、これは来年以降、拡大していく意向だ。
就任が正式に発表された4月から実質約7カ月という短い期間で、さまざまなアイデアを進言し形にしてきた。一応の成果は見せたが、当然、反省点や課題も浮き彫りになっていく。
「限られたバジェットの中で、何かをやりたいとなれば何かを捨てなければならないということは出てくる。それでも、それぞれの部門にお客さんがついているので、できれば維持しつつ足す方向でいきたいと思っています。今回もいろいろなところでコストダウンもやりましたし、無駄や工夫することでセーブできるものを新規企画や強化に向けることは必要になっていくでしょうね」
1年後に向けた、新たな闘いは既に始まっている。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
マフィア、地方に左遷される NEW
【しかし…】一般市民と犯罪組織設立し大逆転!一転攻勢!王になる! イッキミ推奨の大絶品!
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
【鑑賞は自己責任で】強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”
提供:DMM TV
ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い NEW
【全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作】あれもこれも登場…大満足の伝説的一作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
中毒性200%の特殊な“刺激”作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【推しの子】 The Final Act
「ファンを失望させない?」製作者にガチ質問してきたら、想像以上の原作愛に圧倒された…
提供:東映
映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。