ノーベル賞詩人を新解釈&エンタメ性付加!「ネルーダ」監督、「本作は伝記映画じゃない」
2017年11月2日 18:00
[映画.com ニュース] 「NO」「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」で知られるパブロ・ラライン監督が、ガエル・ガルシア・ベルナルと再タッグを組んだ「ネルーダ 大いなる愛の逃亡者」について語った。
詩人として1971年にノーベル文学賞を受賞したチリの国民的英雄パブロ・ネルーダを描く独創的なサスペンス。詩人でありながら、共産主義の政治家として活動していたネルーダは、第2次世界大戦後、チリ政府から追われるようになり、生涯の大半を逃亡生活に費やした。映画は、1948年、逃亡中のネルーダ(ルイス・ニェッコ)の1年間に焦点を当て、代表作である叙事詩「大いなる歌」が生み出された背景に迫る内容となる。第69回カンヌ国際映画祭の監督週間に出品されたほか、第74回ゴールデングローブ賞の映画部門で外国語映画賞にノミネートされた。「バベル」や「ノー・エスケープ 自由への国境」で知られるベルナルは、跡を追ううちにネルーダに魅了されていく警察官ペルショノーに扮する。
ラライン監督は、本作を「ネルーダについての映画というよりも“ネルーダの性質を持つ映画”、もしくはその両方だろうね。僕らはネルーダに読んでほしかった小説を書いたのさ」と自己分析し、「ネルーダは犯罪ものの物語が好きだった。だから、この作品は警官との追跡劇の要素を持ったロードムービーになった。物語の中でいろいろな変化が起こり、登場人物たちも進化していく。風景やその中の動きすべてを、変化していく過程だと考えたんだ。ハンターも獲物も、どちらも追跡ゲームを終わらせないのさ。ネルーダが自分の世界を作り上げたように、僕らは1つの世界を作り上げたんだ」と独特の表現をまじえて解説する。
製作においては、「ネルーダは、ひとつのカテゴリーに収まらない、とても複雑で計り知れないクリエイターだから、彼の人となりや業績をまとめる趣旨で1本の映画を作ることは不可能だと思った。だから、逃亡の物語、警官と文豪の物語を選択したのさ」という。それゆえに「僕らにとって、この作品は偽りの伝記映画だ。詩人の人物像を描くことにはさほど注力していないのだから、本当は伝記映画じゃないのさ。だって、それは不可能だからね」と作品を評し、「そこで、彼の創意と遊び心の側面から映画をまとめることにした。そうすることで、彼の詩、記憶、冷戦下の共産主義者としてのイデオロギーの世界に、観客は浸ることができるんだ」と明確な意志をもってまとめたと話す。
ラライン監督は続いて「ネルーダは、おそらく彼の作品中で最も完成された、最も冒険的な詩集である『大いなる歌』の大半を、逃亡中に目にしたもの、経験したことに感化されて書き上げた。その詩は激情と空想、恐ろしい夢に満ち、危機に瀕したラテンアメリカの描写、その怒りと絶望に満ちている。一方でネルーダは逃亡中に戦争や激しい怒り、詩に関する政治的な学術書もまとめていて、それは僕らの想像をかき立てた。なぜなら彼の存在や作品のように、この映画は、映画的かつ文学的な視点から、アートと政治の交わりを描くからさ」と自身の考察をまじえて語った。
「ネルーダ 大いなる愛の逃亡者」は、11月11日から全国公開。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。