ハリソン・フォードが語る「ブレードランナー 2049」の“最重要テーマ”
2017年11月2日 14:30
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[映画.com ニュース] 名優ハリソン・フォードが、代表作の1つ「ブレードランナー」の30年後を描く新作「ブレードランナー 2049」(公開中)を携えて約9年ぶりに来日。作品への思いから、俳優としてのあり方まで力強く語った。
2049年の近未来を舞台に、人造人間“レプリカント”の暴挙を阻止する捜査官“ブレードランナー”のK(ライアン・ゴズリング)と前作の主人公デッカード(フォード)が、謎めいた科学者ウォレス(ジャレッド・レト)の陰謀に迫っていくさまを描く。「メッセージ」「ボーダーライン(2015)」で知られるドゥニ・ビルヌーブ監督がメガホンをとり、世界46カ国で初登場第1位を記録している。
いまだにフォロワーを増やし続けるSF映画の金字塔「ブレードランナー」が世に放たれたのが、1982年。世界に衝撃を呼び起こした革新的な未来描写は本作でさらなる進化を遂げているが、フォードが作品への参加を決めたのは、純粋に脚本に心を動かされたからだという。「(脚本にひかれたのは)正直、キャラクター描写そのものというよりは、キャラクターの関係性だった。お互いにどのように気遣って思いあっているか、がこの話の重要な部分でもあるが、役同士の関係性をどう具現化するかは、俳優が担当する部分だからね」と物語自体の完成度だけではなく、演じ手としてのやりがいも感じた様子。フォードは前述の“関係性”についてさらに言及し、心をつかまれたのは「言語の違いに関わらず共通する、もっと感情的なところだったんだ。文化というよりは、人間性の部分。それは日本語だろうと中国語だろうと関係なく共通するものだし、取り巻く環境にも左右されない」と力を込める。
フォードが注視したという“感情”、つまり“心”は、本作の最重要テーマでもある。人間、レプリカント、さらにはAI(人工知能)に至るまでが感情に左右され、苦悩するさまが前作以上にエモーショナルに描かれており、叙情的な映像も相まって見る者の心を震わせるが、「そもそも、デッカードと(『ブレードランナー』のキーキャラクターである)レイチェル、デッカードとKの間には、それぞれお互いにしか共有できていない関係性や歴史というのがあってね。だからこそ、この話の重要なところというのは“関係性”なんだ。この映画にとって、お互いの共有した歴史への理解が重要だからさ。(その歴史を踏まえ)いま、彼らが何を求めていて、何を実現しているか。そして何を体感しているのかを見てほしいね」と言葉を選びつつ、さらにはジェスチャーを織り交ぜてじっくりと語った。
またフォードは、「ブレードランナー」の遺伝子を継承し、新たな領域へと導いたビルヌーブ監督の手腕を絶賛。「(前作のメガホンをとり、本作では製作総指揮を務めた)リドリー・スコットに監督を任せられたら、ドゥニ(・ビルヌーブ)はもう彼には質問しなかった。自分の映画を作ったんだ。あれだけ自信がある人はめったにいない。ここまで大きなキャンバスを扱えるだけの経験を持つ人は少ないが、彼は持っている。視覚的に物語を紡ぐ能力も高い」と信頼を寄せる。本作では監督が決定する前にフォードの出演が決まっており、一説にはビルヌーブ監督の起用はフォードの承認もあったというから、ビルヌーブ監督への寵愛(ちょうあい)がうかがえる。
ビルヌーブ監督の加入により、作品全体に詩的なムードが付加されたが、世界観においても変化が訪れている。新たな舞台となる2049年は環境破壊が進み、食糧難も深刻な状況。よりディストピア感が強まったともいえるが、かつて「『ブレードランナー』は予見的な作品だった」と語っていたフォードは、本作で描かれている未来について、どうとらえているのだろうか。フォードはしばし考えたのち「“予見的”というのは、科学やビジネスに限ったことではなく、ましてや、地球規模のことではなく、世界中に共通しうる人間性ともいうかな。そういった部分についてだ。あくまで、ブレードランナーの世界観においてだがね。だから、“(未来が)こうなる”という現実問題というよりも、“こうなるかも”という可能性を描いているんだ」と含みを持たせる。
「このまま温暖化が進んで海面が上昇するなら、ロサンゼルスを壁で包囲しなくてはならなくなるだろう。そうなると、例えば富豪や美人が理不尽に恩恵を受けて、スラム化した地球を捨ててどこか(他の惑星)へ移住できるかもしれない。本作はあくまでフィクションだし、今日明日に起こる問題というわけではないが、あり得ないわけでもない。だから、未来を考えるうえで、参考にはできるかもしれないね」と締めくくった。
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