「映画に対するまなざしを新たに作ることができる」カンヌ映画祭総代表が語る「リュミエール!」
2017年11月1日 17:00
[映画.com ニュース] ルイ&オーギュスト・リュミエール兄弟が1895~1905年の10年間に製作した作品群から選んだ108本で構成し、4Kデジタルで修復した映画「リュミエール!」が公開中だ。監督・脚本・編集・プロデューサー・ナレーションを兼任したカンヌ映画祭総代表であり、リヨンのリュミエール研究所のディレクターを務める、ティエリー・フレモー氏が東京国際映画祭に合わせ来日。映画の父として知られるリュミエール兄弟の作品、自身の映画に対する思いを語った。
「まず私自身のことをお話すると、カンヌ映画祭の仕事をしながら、リヨンのリュミエール研究所でも仕事をしています。一方では現代的な映画を見て、また一方ではとても古典的な映画を見ているのです。そこで言えるのは、二つとも“同じ”ということです。リュミエールをクラシック作品という枠で捉えるのではなく、今、リュミエールの作品を見ると、現在の映画に対するまなざしを新たに作ることができるのです。リュミエール作品を見ることは、目をきれいに洗い流すような、シンプルさを再び感じるような体験になると思います。そこに何か意見を見出すということではなく、シンプルに見ること、決して評価することではないのです。今回、私自身で映画を作ったという意識はありません。あくまでも、リュミエール作品です。彼らの映画に価値を与えたかったのです。そして、彼らの作品を映画館で上映したかったのです」
「彼らの作品の素晴らしさは、純真無垢という部分にあると思います。何も知らない人が何かを創造するので、見る側も何の知識がなくても見ることができるのです。リュミエール兄弟は、世界をシンプルなまなざしで見ていたと思います。そのシンプルさというのは、芸術にとっては大きな長所で、そのシンプルさが、真実に手が届くことに役立ちます。ピカソは『私は子供のように人生を絵にしたい』と語っています」
「私にとっては映画の役割は、芸術的な表現だと思います。そして世界を知るための素材で、自分自身を知る道具でもあると思います。親密であると同時に、集団でもある。フランス語のシネマという言葉は、映画という意味と、映画館という両方の意味があります。映画は産業芸術なので、お金は必要です。ヒットが要求されます。大きな予算で作られた映画が、小さな予算で作られた映画を守ります。ですから、カンヌ映画祭では、その両方が必要なのです。人生には小津安二郎の映画がなければさみしいですが、『スター・ウォーズ』がない人生もつまらないものです」
「まず、素晴らしいものを発明してくれたと感謝の気持ちを述べたいです。彼らは、気づいていなかったと思いますが、正真正銘の芸術家であったということを言いたいです。この発明によって、世界を発見することができました。その後、素晴らしい人たちがふたりの後を引き継いだ。発明当初、映画は不確かなもので、今でもその存在は繊細なものですが、世界で映画を愛する人たちが情熱を持っています。彼らに聞きたいことはないですね。彼らについて何も記録が残っていないとういことは神秘的でもあります。だからこそ、その神秘性を評価したいのです。答えをもらうより、自分でその答えを探したいのです。恋愛と同じことですね」
「リュミエール!」は、東京都写真美術館ホールほか全国で順次公開。第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。