孤独からの救済描いたブルガリア映画、ムラデノフ監督「日本には秘められたものがある」
2017年10月26日 16:15

[映画.com ニュース]第30回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたブルガリア映画「シップ・イン・ア・ルーム」が10月26日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、来日したリュボミル・ムラデノフ監督、出演のツベタン・アレクシエフ、イバン・ディミトロフが会見を行った。
映画は、男性カメラマンのフィリペと、家を失った女性パブラとその弟イバンの関係性を描く。フィリペは偶然出会った姉弟を家に受け入れるが、イバンは1年前に暴漢に襲われたことをきっかけに外に出られなくなっていた。カメラマンとしての方向性を見失っていたフィリペだったが、イバンを孤独から救済するため、外の世界の何気ない映像を撮り始める。
今回が2度目の来日となったムラデノフ監督は、「世界中を回っても、また戻ってきたいと思えるのは日本だけです。ここには何か秘められたものがある気がします。それはヨーロッパでは失われたものかもしれません。私の作品がほかでもない日本で上映されたのも偶然ではなく、何かのつながりがあると思います」と日本愛を明かした。
また、今作でフィリペが映した淡々とした“日常”で見せたかったのは「演技ではなく、生の映像」だといい、「例えば、地下鉄や電車で知らない人と向き合うと、現実と向き合っているような気がします。その人が私の目の前で輝いていている。そんなメッセージをフィリペからイバンに伝えようと思いました。私にとって大切なのは、そんな生の現実を感じ取ることなんです」と込めた思いを語った。
初来日となったフィリペ役のアレクシエフは、「学生時代に極真空手をやっていたので、日本に来られて嬉しいです。その経験があったからこそいろいろな役ができました。ストイックさや、言われたことを正しく聞いて従うといった、演技でも使える能力を身に付けたので、日本に恩を感じています」とニッコリ。劇中でのフィリペとイバンの親子のような関係性について問われると、「フィリペとイバンが出会う意味には、フェリペが自分自身と向き合うという意味もありました。父と子の関係というよりは、イバンの立場に立って、同じように考えるようにしました」と述懐した。
一方、イバン役のディミトロフは、「個人的な考えですが、西洋ではどんな男性間の友情にも父と子のようなものが感じられるんです」と述べ、「昔は父親が息子が立派な大人になるための会話や儀式のようなものがありましたが、現代にはありません。撮影中には、姉と自分を受け入れて世話をしてくれたフィリペのことを、父親のように感じるべきではないかと思いました」と、昔ながらのあたたかな親子関係に思いを馳せていた。
第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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