浦沢直樹、創作の秘訣はリベンジ精神! 手塚眞監督は“ジャンル越境論”を提唱
2017年10月6日 23:09
[映画.com ニュース]1985年に公開された「星くず兄弟の伝説」から30年以上の時を経て、リメイクでも続編でもない、新たなコンセプトで製作された映画「星くず兄弟の新たな伝説」のライブイベント“星くずサロン”が10月6日、東京・代官山のライブハウス「晴れたら空に豆まいて」で行われ、手塚眞監督、中川翔子、漫画家・浦沢直樹氏が参加した。
18年1月20日の「星くず兄弟の新たな伝説」劇場公開に向けて、手塚監督がホストとなり、縁のあるゲストを招く定期のライブイベント“星くずサロン”。手塚監督と亡き父が旧知の仲だった中川は作品をいち早く鑑賞したらしく「全編音楽がものすごく素晴らしかった」と絶賛。手塚治虫原作「上を下へのジレッタ」ミュージカル版に出演していたため「舞台と手塚作品の融合はどう見ていますか?」と質問を投げかけると、手塚監督は「手塚作品は、設定が極端だから舞台向きだと思っていますね。映画でリアルに表現しようとすると、逆におかしく見えてしまう。一方で漫画チックに描いても変になってしまうから」と分析していた。
手塚治虫の大ファンである浦沢氏は「直接お話ししたことはないんですが、新人の頃パーティで一度だけすれ違いました。でも、自分の隣に『陽だまりの樹』を立ち上げた時の編集者がいたんです。彼は既に担当を外れていたんですが、手塚先生は見た瞬間に『すぐに仕事場帰るから!』と言って、反射的に逃げていってしまった(笑)」と締め切りに追われていた売れっ子作家ならではの爆笑エピソードを披露。さらに、ちばてつや氏が不慮の事故で手を負傷した際、漫画界のレジェンドたちが集ったトキワ荘のメンバーが立ち上がり、全員でペン入れを行ったという知られざる逸話も明かしていた。
「鉄腕アトム」を題材にした「PLUTO」の執筆時には「眞さんから執筆OKが出た瞬間に具合が悪くなった。体中じんましん。何を書いていても背後から『浦沢氏、それは違う』と手塚先生の声がした(笑)」と振り返っていた浦沢氏。やがて創作の秘訣として「ずっと描いているということはアイドリング状態。何か声をかけられた時に『はい!』とすぐ手を挙げられる。その返事をするタイミングが重要」「手塚先生も作品の単行本化の時は、いつも描き直している。漫画家はいつもリベンジしたいと思い続けているもの。“描く”と“描き直したい”ということの繰り返しで、それがエンジンとなり回転していく。とにかく1回形にしなければならない」と熱弁していた。
一方、手塚監督は、浦沢氏が自作「BILLY BAT」のプロモーション映像を自ら手掛け、バンド活動にも精を出していることを引き合いに出し「昔はこの道一筋という考え方だったが、これからはクリエイターがジャンルをまたがってもいいと思うんです。漫画家なのに音楽をやっても全然いいんじゃないか。例えば“浦沢直樹”というジャンルが残ればいい。人間の方がジャンルの上に立つ」と持論を展開した。やがて中川から「映画の監督はしたくないんですか?」と問いかけられた浦沢氏は「僕はスタンリー・キューブリックが大好きなので、キューブリック的になってしまう可能性がある。やり出すといつまで経っても出来やしないということ(笑)」とジョークを飛ばして、場内の笑いを誘っていた。
「星くず兄弟の新たな伝説」は、近田春夫原案、手塚監督によるロックミュージカル映画。近未来を舞台にスターダスト・ブラザーズのカン(三浦涼介)とシンゴ(武田航平)という2人のロッカーが月へ行ったり女性になったり西部劇をしたりと、冒険と活躍を繰り広げる奇想天外な物語。18年1月20日から東京・テアトル新宿ほか全国順次公開。
フォトギャラリー
Amazonで関連商品を見る
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
ホワイトバード はじまりのワンダー NEW
いじめで退学になった少年。6年後、何をしてる――?【ラスト5分、確実に泣く“珠玉の感動作”】
提供:キノフィルムズ
映画料金が500円になるヤバい裏ワザ NEW
【12月“めちゃ観たい”映画が公開しすぎ問題】全部観たら破産確定→ヤバい安くなる裏ワザ伝授します
提供:KDDI
【推しの子】 The Final Act
【社会現象、進行中】鬼滅の刃、地面師たちに匹敵する“歴史的人気作”…今こそ目撃せよ。
提供:東映
モアナと伝説の海2
【「モアナの音楽が歴代No.1」の“私”が観たら…】最高を更新する“神曲”ぞろいで超刺さった!
提供:ディズニー
失神者続出の超過激ホラー
【どれくらいヤバいか観てみた】「ムリだよ(真顔)」「超楽しい(笑顔)」感想真っ二つだった話
提供:プルーク、エクストリームフィルム
食らってほしい、オススメの衝撃作
“犯罪が起きない町”だったのに…殺人事件が起きた…人間の闇が明らかになる、まさかの展開に驚愕必至
提供:hulu
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
文豪・田山花袋が明治40年に発表した代表作で、日本の私小説の出発点とも言われる「蒲団」を原案に描いた人間ドラマ。物語の舞台を明治から現代の令和に、主人公を小説家から脚本家に置き換えて映画化した。 仕事への情熱を失い、妻のまどかとの関係も冷え切っていた脚本家の竹中時雄は、彼の作品のファンで脚本家を目指しているという若い女性・横山芳美に弟子入りを懇願され、彼女と師弟関係を結ぶ。一緒に仕事をするうちに芳美に物書きとしてのセンスを認め、同時に彼女に対して恋愛感情を抱くようになる時雄。芳美とともにいることで自身も納得する文章が書けるようになり、公私ともに充実していくが、芳美の恋人が上京してくるという話を聞き、嫉妬心と焦燥感に駆られる。 監督は「テイクオーバーゾーン」の山嵜晋平、脚本は「戦争と一人の女」「花腐し」などで共同脚本を手がけた中野太。主人公の時雄役を斉藤陽一郎が務め、芳子役は「ベイビーわるきゅーれ」の秋谷百音、まどか役は片岡礼子がそれぞれ演じた。