是枝裕和監督、裁判制度の「怖さが残れば」 「三度目の殺人」に込めた思い語る
2017年10月3日 06:00
映画は、是枝監督のオリジナル脚本で描いた法廷心理ドラマ。勝つことにこだわる弁護士・重盛(福山雅治)は、2度目の殺人容疑で起訴され、死刑を確実視されている男・三隅(役所広司)を、無期懲役刑に減刑しようと試みる。しかし重盛は、面会を重ねるたびに供述を二転三転させる三隅に、次第に翻弄されていく。
2009年に裁判員制度が施行され、裁判員になった経験があるという女性が「この映画で訴訟経済や事前確認会議を知り、やたらと怖いと思っていたものの正体について考えることができた」と感想を述べると、是枝監督は「僕もこの映画を作ることを通して知りました」と告白。弁護士への取材で、裁判が始まる前から判決が「だいたい決まっている」と言われたといい、「ちょっと怖いなと僕も感じましたし、見た人にも、こうやって人って裁かれるんだろうなと、そのことの持つ怖さみたいなものがちょっと残ればいいなと思いました」と込めた思いを語った。
これまで、今作のラストの解釈は観客に委ねると公言してきた是枝監督だが、シンボリックに登場する十字に狙いがあったのかという問いには、「なんて答えればいいんだろうな……」と思わず苦笑。決心したように、「主人公はそう思ったんじゃないですかね。(広瀬すず演じる被害者の娘)咲江も、きっと自分が何らかの加担をしたと考えたんじゃないですかね。直接手を下したかどうかはともかく、自分が被害者ではなく加害者意識を持っていることが大事だと思ったので、そういう設定を考えていました」と真摯に答えた。
また、是枝監督に触発されて映画製作者を目指しているという高校生が、映画製作で1番大切にしていることを聞くと「自分が面白いと思うものを撮るのが1番。それがスタートだと思います。順番としてはそれでいいと思う」「誰の作品のどんな悪口を言うつもりもまったくないけれど、『これは誰が作りたくてできてるんだろうな』と思う映画が1番腹が立つ。強い思いのある映画は見ていてわかる。そういう強度、強さを持っている映画を僕は作りたいし、見たい」と回答。質問者に、「強い作品を作って下さい」とエールを送っていた。
最後には、「見終わった後にご家族やご友人たちと色んなことを話し合うのも、映画体験として僕は大好きな時間。そんな時間が今回の映画はたっぷりあるなと、作った側の人間としても無責任に思っております。そんな時間も含めて楽しんでいただけたら嬉しいです。そろそろ自分のなかではこの映画にピリオドを打って、次の作品に向かうタイミングに差し掛かっているのですが、この映画が日本だけではなく、海外にも広がっていけばいいなと思います」とほほ笑んでいた。
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