第74回ベネチア国際映画祭はギレルモ・デル・トロ監督新作に金獅子賞!
2017年9月10日 20:50
[映画.com ニュース] ベネチア映画祭の最終日を迎えた9月9日(現地時間)、授賞式が行われ、コンペティションで最も人気の高かったうちの一作、ギレルモ・デル・トロの「The Shape of Water」が金獅子賞に輝いた。金獅子が発表されると会場には歓声が沸き上がった。メキシコ人監督の金獅子受賞は史上初。感激した面持ちで目をうるませながら登壇したデル・トロは、「すべての若いメキシコ人監督にこの賞を捧げたい」と述べた。
審査員グランプリは、戦争の不条理を描いたイスラエル映画の「Foxtrot」へ、監督賞は離婚した夫婦の養育権をめぐる深刻な争いを描き、初長編に送られるルイジ・ラウレンティス・ヴェニス賞もダブル受賞した、グザビエ・ルグランの「Custody」におくられた。
デル・トロと並んで評価の高かった「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」は、監督・脚本を務めたマーティン・マクドノーが脚本賞を獲得。男優賞はレバノン人とパレスチナ難民の諍いを描いた「The Insult」のカメル・エル・バシャ、女優賞は家族から孤立した孤独な主婦に扮した「Hannah」のシャーロット・ランプリングが輝いた。また審査員特別賞はアボリジニの迫害を描いた「Sweet Country」が獲得。日本から参加した是枝裕和の三度目の殺人」は、受賞を逃した。
若手有望俳優に送られるマルチェロ・マストロヤンニ賞は、「Lean on Pete」で15歳の孤独な少年を演じ映画を牽引したチャーリー・プラマーに送られた。審査委員長のアネット・ベニングは、今年のセレクションのレベルの高さを強調し、審査員団のオープンな議論の末、なるべく賞が各作品にばらけるように気を使ったと語った。
セレモニーの後は、今年のクロージングフィルムに選ばれた北野武の「アウトレイジ 最終章」が上映された。ベネチアでの北野人気の高さは相変わらずで、レッドカーペットの見物には地元の北野ファンクラブの面々が、ビートたけしのお面を被って勢揃いし、北野監督を驚かせたほど。北野監督は、「(ファンが多い)ベネチアに来るとホッとする反面、気に入ってくれただろうかと気になってしまう。ベネチアはバイオレントな映画に寛容な印象がある」と語った。
さらにセレモニーに先立つ記者会見で、現代の日本社会におけるヤクザの存在について尋ねられた北野監督は、「拳銃と暴力がないだけで、組織的にはふつうの企業の構造に似ている。主人公はそのなかで、古いタイプの人間」と語った。また、「ヤクザ社会をとてもよく描かれていますが、お知り合いはいるのですか?」と尋ねられると、「私の隣にいる人がそうです」とオフィス北野の森昌行社長を示し、会場の笑いを誘った。
ベネチアはいち早く3D映画を積極的に紹介してきたが、今年からVR部門を設け、コンペティション方式で授賞を授けるなど、歴史の重みだけではなく、つねに新しい改革を目指していることも感じさせた。(佐藤久理子)
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