被災を乗り越えた石巻の老舗映画館がアート作品に「リボーンアート・フェスティバル」
2017年8月17日 18:00

[映画.com ニュース] 東日本大震災からの復興を支援する、現代アート、食、音楽のイベント「リボーンアート・フェスティバル」が宮城県石巻地域を中心に開催中だ。アート部門では、津波で被災した石巻市の老舗の映画館「日活パール」を会場とし、アーティストの視点から劇場を再構築した作品が展示されている。
かつて歌舞伎座だった同館は、1950年代に洋画専門館から日活のチェーン劇場となり、80年代からはロマンポルノやピンク映画を上映する成人映画館として、石巻の劇場文化を支えてきた。大地震による津波で浸水したものの、館主と劇場ファンの熱意によりわずか3カ月後に営業再開、大人の文化と娯楽の場としての明かりを灯し続けたが、今年6月に惜しまれつつ閉館した。

エントランスをくぐると、壁には手書きの宣伝コピーに成人映画のポスター、石原裕次郎主演「何か面白いことないか」、小林旭主演「投げたダイスが明日を呼ぶ」の日活映画のノボリなど、営業当時のレトロな雰囲気が残され、館内には往年の洋画ポスターや映写機も。年季の入った温かみのあるロビーからは、館主の思いと劇場を愛した観客たちの息遣いが感じられる。
同館には美術集団カオス*ラウンジと、ハスラー・アキラ氏の作品が展示されている(18歳未満は入場不可)。エントランスにハスラー氏の作品、館内2スクリーンのうちのひとつに、カオス*ラウンジの作家による、劇場に残されたポルノ映画ポスターをコラージュしたデジタルペインティング、映画館の座席を再現した彫刻、最新のVR技術を用い、廃墟で起こる出来事をゲーム感覚で楽しむ作品など、劇場という空間を生かし様々なアプローチで制作された作品が並ぶ。カオス*ラウンジ代表の黒瀬陽平氏は「幕末から続く石巻の劇場文化を引き継いだ、アンダーグラウンドなカルチャーの拠点として、震災をも乗り越えた日活パールこそ、この街で最も“芸術的”な場所です。そのことを現代美術のかたちで残せたらと思い、鎮魂のための劇場を作りました」と話す。
アート部門の別会場には、今年の第70回カンヌ映画祭でルイユドール(最優秀ドキュメンタリー賞)を受賞したアニエス・バルダとの共同監督作「Visages Villages(原題)」(2018年公開予定)が話題を集めたフランス人アーティストJRの作品、第67回ベルリン映画祭コンペ部門出品ドキュメンタリー「Beuys」でその半生が映し出されたドイツの芸術家ヨーゼフ・ボイスの作品、2015年の園子温監督「ひそひそ星」個展を企画したChim↑Pomの作品など、映画ファンにとっても興味深い現代アート作品が展示されている。今年遅めの夏休みには、ぜひ石巻を訪れてはいかがだろうか。「リボーンアート・フェスティバル」(http://www.reborn-art-fes.jp/)は9月10日まで開催。
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