エドガー・ライト監督、情熱と本物志向で作り上げた「ベイビー・ドライバー」
2017年8月16日 16:00
[映画.com ニュース] 「ショーン・オブ・ザ・デッド」や「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」で世界中の映画ファンの心をつかんだエドガー・ライト監督が、4年ぶりの新作「ベイビー・ドライバー」を引っさげ来日。アクション映画と音楽、情熱を注ぎ続けたふたつのファクターを全編にわたり融合させた、会心の一作について語った。
映画の主人公は、銀行強盗の逃走車を運転する青年、通称ベイビー(アンセル・エルゴート)。幼い頃の事故の後遺症で耳鳴りに悩まされているが、お気に入りのプレイリストが入ったiPodさえあれば、天才的なドライビング技術を発揮する。一度は犯罪組織から足を洗ったベイビーだが、恋人デボラ(リリー・ジェームズ)の存在を元ボスにかぎつけられたことで、再び強盗計画に担ぎ出され逃走車のハンドルを握る。
本作の白眉は、音楽とアクションの連動。「音楽は、自分にインスピレーションを与え、モチベーションを高めてくれるもの」というライト監督は、劇中の出来事を楽曲で駆動させ、そのリズムに登場人物たちの動作までシンクロさせた。撮影現場では、俳優が装着したイヤーピースやヘッドフォン、あるいは大音量のスピーカーで、必ず該当の楽曲を再生したという。「役者たちが撮影時に実際に耳にした楽曲を、観客が聴くというのは大きなポイント」というように、音楽で物語と登場人物、さらに観客までも結びつけたことになる。
22年前、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの「Bellbottoms」を聴いたときから、音楽がアクションを突き動かすというアイデアを温め続けた。それは冒頭の6分、同曲に乗せスバル「インプレッサWRX」がアトランタの街中を疾走するカーチェイスとして結実した。「VFXについてまったく知識がない人でも、それがリアルかどうかはわかる」と、カーアクションはすべて実際のロケーションで走行。しかも、「撮影用の台車に自分の体をハーネスでくくりつけて、リアルタイムでモニターをチェックしたんだ。かなりドキドキしたよ」と、本物志向ゆえの型破りな撮影方法を告白した。
ロックからソウル、ジャズ、ラテンと幅広い年代・ジャンルで構成されたサウンドトラックと同様、犯罪スリラーをベースにした物語は、ボーイ・ミーツ・ガール、コメディ、ゴアなど様々な映画の要素を網羅する。それでいて音調が乱れることはない。「監督の仕事は、自分が思い描いたトーンをコントロールすること、それを日々の撮影現場で保っていくことじゃないかな。ぼくの場合、撮影前に映画のあるべき姿が見えているんだ。あとは、その世界観やトーンをいかにキャストやスタッフに伝えるか。そうやって、作品のムードがつくられていくんだよね」とこともなげに語る。
「いろんなアートへの愛情に人生経験が加わることで、その人の感性がつくられ、磨かれていくと思う」という言葉通り、「ベイビー・ドライバー」では、持ち味である斬新なビジュアルテリングのキレが加速し、ポップカルチャーへのオマージュの純度が高くなっている。かねてオリジナル映画の重要性を説いてきたが、「その思いは、この作品の前も後も変わらない」と身を乗り出す。「ハリウッドが、シリーズにかける時間と同じくらい新しい作品にもかけることができれば、もっと多様性のある映画界になるだろう」と言葉に一層の力がこもった。
長編デビュー作以降初めて脚本を単独で執筆した“100%”オリジナル作品は、シリーズ大作がひしめく北米興行で、大ヒットの基準となる1億ドルをマークした。「プレッシャーは大きかった。オリジナルのアイデアが少しでも上首尾にいかないと、『観客はオリジナル作を望んでいない。それは数字が証明している』とマスコミに書かれてしまうから。それだけに、成功して本当にうれしいよ」と目尻を下げた。
「ベイビー・ドライバー」は8月19日公開。
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