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“次男夫婦”妻夫木聡&蒼井優「家族はつらいよ2」で感じた山田洋次流喜劇の妙

2017年5月28日 12:30

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再び“次男夫婦”を演じた妻夫木聡&蒼井優
再び“次男夫婦”を演じた妻夫木聡&蒼井優

[映画.com ニュース] 悲劇と喜劇は表裏一体だ。2016年3月に公開された前作に引き続き、山田洋次監督は「家族はつらいよ2」で“笑えない状況”の中で、矢継ぎ早に爆笑の展開を生み出してみせた。平田家の一員として丁々発止のやり取りを繰り広げる妻夫木聡蒼井優は、再びの招集に感動しきり。「山田監督の喜劇に対する気合いをまた感じることができました」という蒼井の言葉からも、常に笑いを追い求める山田組の光景がありありと浮かび上がってきた。(取材・文/編集部、撮影/堀弥生)

本作は興行収入13.8億円のヒットを記録、第40回日本アカデミー賞では優秀作品賞と優秀脚本賞を受賞した「家族はつらいよ」の続編。平田周造(橋爪功)と妻の富子(吉行和子)の離婚騒動から数年後を舞台に、平田家が直面する新たな問題をつづる。物語は周造を巡る高齢ドライバー問題から口火を切り、“無縁社会”という大きなテーマを浮き彫りにしていく。

「山田監督が考える喜劇というのは日常の中で起こりえることなんですよね。ありえないことじゃなくて、ありえるからこそ、人間も滑稽に見えるし、その姿も面白おかしく見える」と分析する妻夫木。そして山田監督自身も喜劇映画ではタブーと自認する「死」というモチーフがあえて盛り込まれていることについて「リアリティがないと死という要素が笑えなくなっちゃうんですよ。死は死で受け止めるということではなくて、全てが関連する大きな骨組みの中での物事、出来事が沢山あるのですんなり受け入れられるはず。物語をきちんと引き締める部分、そしておおいに笑わせてくれる部分の温度差のバランスが素晴らしいんです」と述べていた。

「いつの間にか自分が物語の世界に入り込んでいる。『こういう家庭あるな』と感じる位、親近感のある作品」という妻夫木の言葉に同調していた蒼井は「(前作で)この座組が終わりという感覚はなかったんです。勿論、前作が観客の皆さんに受け入れられたからこそ本作があるのですが、そのまま“平田家”の時間が続いていました」と告白。そして蒼井が抱いていた思いが実現して製作に至った本作で、彼女は重要なポストを担っている。それは山田監督が紡いだ物語の“核”である。

蒼井は第1作のテーマになった“離婚”にまつわるエピソードだけでなく、本作のクライマックスで描かれる“死”にまつわる仰天の実話を山田監督に語っていた。まさに「家族はつらいよ」シリーズは“原案・蒼井優”ともいえる重要なポジションを担っていたのだ。

妻夫木演じる平田家の次男・庄太と、蒼井演じる・憲子は、前作でプロポーズを経て結婚を約束する。クセ者ぞろいの平田家の中では“良心”のような存在だった。憲子が平田姓を名乗り始めてから数年が経過した本作では、2人の演技に対するアプローチやキャラクター像に変化はあったのだろうか。

妻夫木「相手が優ちゃんということもあるんですけど、あんまり時間経過を意識せずに役づくりに取り組めましたね。ただキャラクターとしては、庄太に周造らしいダークな一面が少し出てきました(笑)。脚本の段階では“闇”の一面はなかったんですが、山田監督が現場でセリフを足していったことでにじみ出てきたんです」

蒼井「憲子自身に変わりはありませんね。優しさと強さを兼ね備えているから、平田家の一員になれたんです。でも、憲子に対する家族の接し方に変化はありますよ。例えば周造さんは前作で『憲子さん』と呼んでいたのですが、今回は『憲子』。呼び捨てにされた時は『あ、受け入れられてるんだ』と感じて、私自身のことじゃないのになんだか嬉しくなってしまいました」

妻夫木の発言が象徴するように、山田監督は撮影現場で綿密なリハーサルを行い、脚本に描かれた物語を“更新”していく。「背景に今の日本社会の現実が見える」(妻夫木)、「脈々と続く“平田イズム”を感じられた」(蒼井)と絶賛するように、山田監督が役者の動きや表情をつぶさに観察し、現場で生み出す数々のセリフや演出は絶妙なものばかりだった。

近年では年1本のペースで新作を発表し続ける山田監督。「撮影をしながら考え続けていらっしゃるのでアイデアが枯渇しないんです」という妻夫木の言葉を受けて、蒼井は未だに映像表現を模索する山田監督を「好奇心が止まらない“映画青年”のようです」と最敬礼。「家族はつらいよ2」は、半世紀以上監督として活躍し続ける“映画青年”の情熱、日本映画界が誇る実力派キャストたちの表現力のマリアージュによって、改めて“喜劇”というジャンルの素晴らしさを気づかせてくれる。

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