ホウ・シャオシェンと脚本家が語るエドワード・ヤン 「台北ストーリー」製作秘話
2017年5月5日 17:00

[映画.com ニュース]「クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」のエドワード・ヤンが、1985年に手がけた長編第2作で、マーティン・スコセッシが設立したフィルム・ファウンデーションにより4Kデジタル修復された「台北ストーリー」が、5月6日に公開される。ヤン監督とともに1980年代の台湾ニューシネマをけん引した、名匠ホウ・シャオシェンが主演。このほど、ホウと、共に脚本を担当したチュー・ティエンウェンが来日し、作品とヤン監督との思い出を語った。
「エドワード・ヤンは、アメリカでコンピューターを勉強した頭の良い人でした。帰国後、彼は両親の反対を受けながらも映画の道に進みました。若手の監督たちでオムニバス映画を作ることになり、ヤンを中心にした『光陰的故事』と私たちのグループ『坊やの人形』という作品をきっかけに付き合うようになり、『台北ストーリー』を撮ることになりました。ヤンにアジン役のツァイ・チンを紹介したのが私だったんです」(ホウ)
経済成長の中で変貌する80年代の台北が舞台。家業を継いだ元野球選手のアリョンと、アリョンの幼なじみで恋人のアジン。過去の栄光にしがみつくアリョンと、アジンはアメリカへの移住を考え過去から逃れようとするアジン。心のすれ違いを見せるカップルと、ふたりを取り巻く人々の姿が描かれる。
「アジンがアメリカに行きたいと願う設定は、エドワードの経験などではなく、当時の台湾の社会状況を描いています。アメリカに行けば新しい道が開けるのではないか、という憧れを持っていた時代。当時の台湾社会はとても不安定でした。国民党の内部でいろんなことが起きていた時代だったので、その不安定な状況を脱したいという思いを持っていたのです」(ホウ)

劇中では、すれ違う若い男女の心の動きが、美しい構図の映像で表現されている。「ヤンはとても絵がうまかったのです。コンピュータデザインもやっていたので、彼のあの構図はものすごく綿密に考えられたものだと思います。コンピュータ的な頭脳で、頭の中で思い描いたことをきっちりと映像でそれを表現できたのです。とても映画向きの人だと思います」(ホウ)
両監督と共に仕事をしたチューは、ふたりの違いをこう解説する。「ヤン監督はきっちりカット割りをして、その通りに撮っていくタイプ。『台北ストーリー』のラストシーンはまさに映画でしかできない手法で作り上げられたと思います。でも、ホウ監督は現場で人物がどう動いていくか、そして、現場でカメラが動き出しても、役者はいったい何を撮るのかわからないことがあります。そのぼんやりしたところから、ほしい画を撮るという不思議なやり方で、自分の撮りたいものを撮っていく。お互い全く逆な手法をとっています。おそらくヤン監督はホウ監督のそういうやり方に魅力を感じていたと思います」
ウー・ニェンチェン、クー・イーチェンらも俳優として出演。映画を志す当時の若手映画人たちが一堂に会した本作は、とりわけ思い出深い作品になったそう。「一番幸せな時代の作品でした。この期間は2,3年、あっという間に過ぎて行きました」と、それぞれの若き日に思いを馳せていた。
「台北ストーリー」は、5月6日からユーロスペースほか全国で順次公開。
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