「アイ・イン・ザ・スカイ」が描くドローン戦争はどこまで本当?元防衛大臣・森本敏氏に直撃
2016年12月21日 12:00

[映画.com ニュース] 元防衛大臣で、拓殖大学の総長も務める森本敏氏が、軍事用の無人戦闘機(ドローン)を題材にした映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」について解説した。
「クィーン」のヘレン・ミレン、「ハリー・ポッター」シリーズの故アラン・リックマンさん、人気ドラマ「ブレイキング・バッド」のアーロン・ポール、「キャプテン・フィリップス」のバーカッド・アブディといった実力派が顔をそろえた軍事サスペンス。アフリカのナイロビでドローンを使ったテロリスト捕獲作戦を実行中の英米軍は、標的が大規模な自爆テロを計画していることを突き止める。指揮を執るパウエル大佐(ミレン)はミサイルを発射してテロリストを一掃しようとするが、殺傷圏内に民間人の少女がいるとわかり、作戦室は大混乱に陥る。米批評サイト「Rotten Tomatoes」では95%の高評価を記録している(12月14日現在)。
森本氏は「主人公が直面する問題についてなど、まさに無人機を保有している国家の悩みを見事に描いていると思います」と本作のリアリティに太鼓判を押す。さらに「映画で描かれている問題点として、無人機を操作する側のメンタルの問題は実際にアメリカでも問題とされています。さらに誰にも撃たれる心配がなく、安全な場所で無人機を操作している兵士が勲章をもらえるという仕組みに、戦地で実際に戦っている戦闘員たちは“一体自分たちは何のためにいるのか?”と、軍隊の士気の低下も心配されています」と実際の問題も絡めて“ドローン戦争”の課題を指摘する。
本作は、“80人の命を救うために、無関係な少女を殺せるか?”という究極の問題にキャラクター1人ひとりが向き合うさまを描いている。全体を通すテーマに対して共感を覚えたという森本氏は「あの女の子を生かすのか、任務を実行するのかと葛藤するなかで、あの女の子に対して“かわいそうに”と思うのは簡単です。でも“かわいそうに”じゃ済まない未来が待っている状況で、人命を犠牲にしてより多くの人命を助ける秩序を維持する、ということをこの映画を見て学ぶべきだと思います」と持論を述べた。
映画で描かれるのは英米のドローン事情だが、森本氏は東京オリンピックを控える日本も“対岸の火事”ではないと解説。「日本は今後アメリカからグローバル・ホーク(偵察用無人機)を3基購入し、三沢基地(青森県)で運用する予定です。すでに無人機を操作するオペレーターも訓練されています。今、日本は東京オリンピックまでに国外から侵入してくる無人機への対策を取るべく、政府でもその方法が議論されています」。
中国や北朝鮮といった近隣諸国との関係性もドローンの台頭によって変化をきたしており「すでに中国の無人機も東シナ海に侵入してきています。スクランブルをかけると(確認できるのは)偵察用の無人機ではあるようですが、実際は中を解体してみないとミサイルが積んであるのかどうかはわかりません。今までは戦闘機が防空識別圏に入ってきたら、こちらから『日本の領空に近づきつつあります、出てください』と警告を送ることができましたが、相手が無人機となるとこちらの意志が正しく伝わりません。そして撃墜することも今の日中関係を考えるとできません。北朝鮮の無人機に関しては、まだ日本にまで飛ばせる射程はないようですが、いくつか韓国では発見されています」とドローンがもたらす新たな恐怖を提示した。
「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」は、12月23日から全国公開。
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