中野量太監督「湯を沸かすほどの熱い愛」撮影中に3度泣いた!
2016年10月24日 17:00
[映画.com ニュース] 宮沢りえ、オダギリジョー、杉咲花が家族を演じる「湯を沸かすほどの熱い愛」で商業映画デビューを果たした中野量太監督が、映画.comのインタビューに応じた。
家長の一浩(オダギリ)が1年前に失踪して以来、休業状態の銭湯「幸の湯」。持ち前の明るさと肝っ玉の強さで家計を支え、一人娘の安澄(杉咲)を育てる双葉(宮沢)は、ある日突然末期がんで余命宣告をされてしまう。双葉は、残り2カ月の人生で、夫の一浩を連れ戻し、学校でいじめを受けている安澄を独り立ちさせ、家族の成長を促していく。松坂桃李が、双葉の生きざまに影響を受けるヒッチハイカー・拓海に扮している。
中野監督は、第63回ベルリン国際映画祭に正式招待された自主映画「チチを撮りに」(2012)で注目された新鋭。本作も第40回モントリオール世界映画祭、第21回釜山国際映画祭、第29回東京国際映画祭へ出品されることになり、国内外から熱い視線を浴びている。マスコミ向けの試写会でも、ある大きな仕掛けが施されたクライマックスが高評価を受けているが「見てもらって初めて“映画”になるから、ずっとドキドキしています。このラストを成立させるためにどれだけ前の部分を丁寧に描くかが重要だったので、ラストがいいよって言われるのが1番うれしいですね」と充実の表情を見せる。
「(反応を)ちゃんと知っておかないと映画を撮った気にならない。僕は巨匠でもないですから」と率先して試写会に足を運び、観賞者の声に耳を傾けているという中野監督からは、作品づくりにおける真摯(しんし)さと貪欲さがうかがえる。「実は同い年で、何かやりたいなと縁を感じていた」と語る宮沢をはじめ、オダギリ、杉咲、松坂といった豪華キャストを前にしても「自分が作った脚本、自分が作った世界をよいと思ってきてくれているので、僕は遠慮も何もしなかった」ときっぱり。変に萎縮することなく、「中心に脚本があって、これをどうよくしていこうか話し合って作っていった。みんなそれぞれだけど『この脚本、絶対面白いですよ』っていう根本は変わってなかった」と良好な関係を築いたようだ。
「宮沢さんは、お芝居に説得力があるんです。(演出を)付けるこっちが『あ、なるほどね』と納得させられてしまうような強さがある。オダギリさんは本当にしなやかで、テストでも毎回演技を変えてくるし、その場の反応で芝居をする人だから面白かった。桃李くんはすごく真摯で優しい人なので、実直にやってくれて役にもそれが出ましたね。花は一生懸命、僕を信じてやってくれた。(宮沢と杉咲の共演シーンで)撮っていても『この2人すげえな……』と思いましたね」と俳優陣の特色を語る。「(撮影中に)3回くらい泣きました。最初の方に撮影した、鮎子(伊東蒼)が『この家にいてもいいですか』と言うシーンでは、カメラマンもびちゃびちゃに泣いていましたね。後は最後の方の病院のシーン。撮影も最後だったので、色々な思いが渦巻いちゃって。幸せ者だと思います」と振り返った。
母子家庭だった自身の経験が本作にも生かされたという中野監督は「誰もが知っている家族の話です。テーマは王道だし、みんなが自然に感じて染みる映画になっています。でも、多分想像していたのとはまったく違う映画になっていますし、果たしてあのラストを自分たちは受け入れられるのかどうかというのも楽しみに見てほしい」とアピールした。
「湯を沸かすほどの熱い愛」は、10月29日から全国公開。
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