落ちこぼれクラスの生徒がアウシュビッツ生存者と対話 「奇跡の教室」監督に聞く
2016年8月5日 07:00
[映画.com ニュース] フランスの高校を舞台にした実話を映画化した「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」が、8月6日から公開される。学校から見放された問題児たちの集まるクラスが、ベテラン教師の情熱とアウシュビッツの生還者との交流によって次第に変化していく様を描いたドラマだ。マリー・カスティーユ・マンシオン・シャール監督に話を聞いた。
貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校。様々な人種の生徒たちが集まる落ちこぼれクラスに赴任した、厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲンは、生徒たちに「アウシュビッツ」をテーマした歴史コンクールに参加するよう勧める。生徒たちは当初反発するが、強制収容所の生存者を授業に招いたことで、意識が変わっていく。主演は、ベテラン女優アリアンヌ・アスカリッドが務めている。
落ちこぼれクラスの元生徒だったアハメッド・ドゥラメが、シャール監督に自身の体験をつづった草稿を送り、2人でシナリオを作り上げていった。名もない少年が送ってきた企画を映画化することにリスクを感じなかったのだろうか。「私の3作目の作品になりました。どんな映画を作るときも、成功を確信することはできません。それよりも、映画を作るときに、内容に心を動かされているかということが重要です。自分が感動していれば、他の人の心を動かすことができると思うのです」
大多数の生徒役は、演技経験のない高校生たちからオーディションで選んだ。裕福ではない移民が多く住む地域で、観光地の華やかなイメージとは対照的なパリ郊外の高校生の態度にも驚かされる。「アメッドが通った学校が実際このようなクラスだったそうです。この作品を見て、教室がこんな風になることはないという先生もいれば、うちの学校はもっとひどいという人もいるので、立地や公立か私立によっても変わってきます」
物語の鍵となる、アウシュビッツの証言者レオン・ズィゲル氏に出演許諾を取ることに長い時間を費やした。「レオンを説得するのは難しかったです。あまり映画を見ない人で、教育ビデオに何本も出演しているので、なぜそれを使わないのかと。最終的に奥様が映画に出ることを進めたのが助けになりました。高齢だったので、返事をいただいた後も撮影中も、もし何かあったら大変だと心配していました。ひとつの可能性として、俳優に彼の役をやってもらう案もありましたが、それはできないだろうと思っていました」
物語のほぼすべてを実話通り再現しているそうだが、フィクションとして取り入れたエピソードもある。「実際のコンクールのセレモニーで、関わった人のすべてを招待して風船を飛ばすということが予定されていたのですが、飛行機のセキュリティの問題で許可が下りず、実現できませんでした。でも素敵なアイディアなので、映画に取り入れたら皆さんの夢がかなうと思ったのです」
「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」は、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町、角川シネマ新宿ほか8月6日から全国順次公開。
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