「ガルム・ウォーズ」の原点――押井守監督が、30年前に鈴木敏夫Pと宮崎駿監督と目にした光景とは
2016年5月18日 12:00
[映画.com ニュース] 押井守監督の長編実写監督作「ガルム・ウォーズ」にも影響を与えた、約30年前に押井監督が体験したアイルランド旅行の写真が公開された。若き日の押井監督とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが写し出されており、2人の長年の交流を垣間見ることができる。
「ガルム・ウォーズ」は、1990年代に「G.R.M.」プロジェクトとして企画されながらも完成に至らなかった作品を、約15年の時を経て実現させた、押井監督の念願の一作。古代の戦いの星アンヌンを舞台に、創造主ダナンが作ったとされるクローン戦士「ガルム」の真実を求めて、異なる種族の3人の戦士が繰り広げる旅と戦いを描く。
同作は、「G.R.M.」プロジェクト立ち上げ当初から、ケルト文化の影響を色濃く受けて構想されていた。ケルトとは、キリスト教文化が広まる以前に中部ヨーロッパから現在のイギリス諸島にかけて文明を築いた民族で、「ガルム・ウォーズ」作中には、ケルト由来の渦巻文様や、キャラクターの呼称(神の名など)、ケルト語を祖とするゲール語によって歌われた主題歌といったかたちで、押井監督によるケルトへのこだわりが多数現れている。
押井監督がケルトにひかれたきっかけには、ジブリの鈴木プロデューサーと宮崎駿監督が深くかかわっている。86年に「天空の城ラピュタ」が公開された頃、鈴木ロデューサーと宮崎監督は、両氏が才能を高く評価していた若き日の押井監督を伴い、ケルト文化の遺跡が多く残る英国アイルランド地方へ旅行をした。その時、アイルランドで目にした荒涼とした光景に、押井監督は自身の原風景を感じたのだといい、後に「とにかく、その風景に目を奪われた。この世の果てみたいに寂ばくとしていてさ。いつかここで映画を撮ってみたいと思ったんだ」と発言している。
その旅行で目にしたアイルランドの情景から広がった空想世界が、「G.R.M.」そして「ガルム・ウォーズ」へと結実したといえ、今回公開された一枚の写真は、その時の押井監督の貴重な姿を伝えている。
「ガルム・ウォーズ」は5月20日全国公開。オリジナルの英語版のほか、鈴木プロデューサーがプロデュースした日本語吹き替え版が公開される。