黒沢清監督「仕事がなくなった」ことが転機に “原作もの”映像化に進出した経緯を告白
2016年5月7日 22:50
[映画.com ニュース] 西島秀俊主演「クリーピー 偽りの隣人」のメガホンをとった黒沢清監督と、共同脚本を手がけた池田千尋が5月7日、東京・アップルストア銀座で行われたイベント「Meet The Filmmaker」に出席。東京藝術大学で師弟関係にあった2人が、「脚本」「原作ものの映像化」を軸にトークを繰り広げた。
日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した、前川裕氏の小説「クリーピー」を実写映画化。オリジナルの名作を数多く生み出した黒沢監督だが、“原作もの”を映像化するようになったのは「『トウキョウソナタ』のあと、全然仕事がなくなった」からだという。「いくつか企画を立てて脚本も書いていたんですが、どれもうまくいかず、4~5年くらい仕事がなかった。こんなことしていたらダメだと思った」と当時を振り返ったが、2012年に湊かなえ氏の小説「贖罪」をWOWOWでドラマ化したことに言及し「たまたま話が来て、『ありがたい、何でもやります』と引き受けた。仕事に徹さねばということでやらせていただいたら、これが実に楽しかった」と転機を告白した。
さらに黒沢監督は、「『贖罪』は作品としても好評を得まして、それ以来どうしたことか、原作ものの依頼が来るようになった」と打ち明け、「僕も楽しかったので、可能な限り引き受けて、今日があります」とニッコリ。同作以降、監督作のほとんどが原作ものであるだけに、「最初からやっていればよかった」とジョーク交じりに語る。
今作は、犯罪心理学者が奇妙な隣人への疑惑と不安から、深い闇へとひきずりこまれていく恐怖を描いている。原作の世界観を残すか否かは常に議論の対象となるが、池田によると今作は「軸は残しているんですが、大きく変わっている」という。原作の前川氏とは脚本執筆の初期段階ですり合わせをしたそうで、「すでに結構変わっていたんですが、前川先生は『基本的にお任せします。黒沢清監督がどう映画化してくれるのか楽しみだ』と言っていました。それで許された気分になり、ぐんぐん変えていきました」と説明した。
また今作の製作経緯に触れ、黒沢監督は「プロデューサーが、とにかく脚本を池田千尋に書かせたいと。最初から池田つきでやらせていただきました」と告白。それでも「願ってもないこと」とタッグを喜び、「彼女は映画監督。自分の脚本を書くことがあっても、人のを書くことはないと思っていた。大学の時も池田の脚本や文を読んでいて、書ける人だと思っていた」と大きな信頼を寄せていた。「クリーピー 偽りの隣人」は、6月18日から全国で公開。
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