オスカーボイコットで注目のスパイク・リーがベルリンで会見
2016年2月21日 12:00

[映画.com ニュース] 2月20日に終了するベルリン映画祭で、現地時間の16日、スパイク・リーの「CHI-RAQ」(犯罪件数の高さで悪名高いシカゴの南部地域の名称)がアウト・オブ・コンペティション部門で上映され、大きな反響を呼んだ。本作はAmazonが製作に乗り出した作品としても話題を呼び、アメリカでは12月に限定公開を迎えたが、ヨーロッパは今回がプレミアとなる。映画の過激な内容と破天荒なスタイルはもとより、いまアカデミー賞ボイコット発言でも注目されているリーだけに、公式上映に先立つ記者会見は熱気に包まれた。
リーは「アメリカはとてもバイオレントな国。これほど銃が蔓延しているところもない。シカゴは最悪で、今年に入って53人が殺されている。戦争状態なんだ」と発言した。本作は、そのシカゴのなかでもっとも危険と言われる地域を舞台に、女たちがパートナーに「暴力をやめないならセックスをさせない」と宣言し、ストライキ(?)をするなんともユニークな物語。ラップミュージックが流れ、ときおりミュージカルが挿入される、パラフルでグルービーな作りになっている。ラストには“ウェィク・アップ”とテロップが出て、明確にメッセージ性がありながらもすこぶるエンターテインメント。スパイク・リーの出世作「ドゥ・ザ・ライト・シング」を彷彿させるようなエネルギーに満ちた快作だ。
一方、今月末に控えるアカデミー賞について訊かれたリーは、「ボイコットを呼びかけたつもりはない。ただ自分と妻は出席しないと言っただけ。昨年、今年と、すべての俳優部門において、カラード・ピープルがノミネートされていない。これはおかしい」と答えた。アカデミー賞の会員は平均年齢が60歳であり、その9割以上が白人、さらに8割近くが男性である。授賞について、おのずと偏りが出てくるのは明らかだろう。
リーの激震が去った翌17日には、こちらもかねてから注目されていたマイケル・ムーアの新作「Where to Invade Next」がベルリナーレ・スぺシャル部門で上映された。もっとも、残念ながらムーア自身は肺炎で入院中のため、出席は叶わなかった。ムーア特有のユーモアに満ちた本作は、彼自身が銃を持たずに他国に”侵入”し、何かアメリカのためになるものを学んで持ち帰る、という原則を実践するドキュメンタリー。といっても、もちろん危険地帯に行くわけではなく、イタリア、フランス、フィンランド、チュニジアなどを回る。紋切り型のところはあるにしても、わかりやすく楽しいアプローチで、他国と比較しながらアメリカの病を分析する。何より映画としてすこぶる面白いのがこの監督ならでは。
アメリカ映画では他に、ジェフ・ニコルズ監督作「Midnight Special」(コンペティション)と、ドン・チードルが監督、主演でマイルス・デイビスを描いた「Miles Ahead」(ベルリナーレ・スペシャル)も注目を浴びた。特殊な能力を持つ少年を描いた「Midnight Special」は、SFというより実力派俳優の演技で見せるドラマ。少年役の新人ジェイデン・リーバーハーを囲んで、マイケル・シャノン、ジョエル・エドガートン、キルスティン・ダンストらが脇を支える。
一方、「Miles Ahead」で自らマイルス・デイビスに扮したチードルは、初監督作とは思えない手腕で、マイルスの頭の中を覗くような独創的な伝記を描いた。何より彼の演技が見ものだが、果たして来年のアカデミー賞にノミネートされるだろうか。(佐藤久理子)
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

“ベスト主演映画”TOP5を発表!
【出演123本の中から、1位はどの作品?】そして最新作は、生きる力をくれる“集大成的一作”
提供:キノフィルムズ

ワン・バトル・アフター・アナザー
【個人的・下半期で最も観たい映画を実際に観たら…】期待ぶち抜けの異常な面白さでとんでもなかった
提供:ワーナー・ブラザース映画

96%高評価の“前代未聞の心理戦”
【スパイによる究極のスパイ狩り】目を逸らせない超一級サスペンス
提供:パルコ

映画.com編集長が推したい一本
【ただの映画ではない…】むしろ“最前列”で観るべき奇跡体験!この伝説を人生に刻め!
提供:ポニーキャニオン

酸素残量はわずか10分、生存確率0%…
【“地球で最も危険な仕事”の驚がくの実話】SNSで話題、極限状況を描いた超高評価作
提供:キノフィルムズ

めちゃくちゃ笑って、すっげぇ楽しかった超刺激作
【これ良かった】激チャラ大学生が襲いかかってきて、なぜか勝手に死んでいきます(涙)
提供:ライツキューブ

なんだこのかっこいい映画は…!?
「マトリックス」「アバター」など数々の傑作は、このシリーズがなければ生まれなかった――
提供:ディズニー

宝島
【超異例の「宝島」現象】こんなにも早く、心の底から“観てほしい”と感じた映画は初めてかもしれない。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント