「フジコ」尾野真千子、「本当につらかった」殺人鬼役と格闘し続けた日々
2015年11月11日 13:45
[映画.com ニュース] 真梨幸子氏のベストセラー小説を、動画配信サービス「Hulu」が映画「凶悪」の脚本家・高橋泉を起用し、完全オリジナルの連続ドラマとして映像化した「フジコ」で狂気の殺人鬼を演じた尾野真千子が、インタビューに応じた。
物語は、一家惨殺事件で生き残った少女フジコ(尾野)が、幸せを求めて次々に殺人を犯し、ついには逮捕され死刑囚になるまでの衝撃的な半生を、出版社の女性記者が獄中にいるフジコへの取材の中で紐解いていく。
その凄惨な内容から、「オファーを1度は断ろうと思った」と語る尾野だが、「凶悪」を見たことが契機になったと明かし「私にもできるかもしれない。何か伝わるかもしれない。1、2%くらい楽しんでみよう」と出演を決意したという。だがその役作りは「どうしていいかわからなかった。共感したいとも思わなかったし、フジコという役とずっと戦っていました」と困難を極めたそうで、最終的には「『自分だけ生きていればそれでいい』と思いながらやっていました。いらないものを排除していく人ですからね。(そういう気持ちに)なるしかなかった」と振り返った。「私は、同じ言葉をしゃべる生き物を殺したことがないので、フジコの気持ちはわからない。1回も整理が付かない現場だったし本当につらかったけれど、出来上がったものを見て、フジコはそういうことを考えていたんだってわかった。そう思えたから、やってよかったです」と安どの表情を浮かべた。
撮影を終えた今でも「フジコのことは好きにはなれない」と率直に語る尾野は、「いかようにも変わっていけるし、全部リセットしてしまう人。だから(ある意味で)役者ですよね」とその人物像を解説。「この人にとって、悲しさってどの程度のものなのかな。悲しいと思ったら笑っているし、本当によくわからない。答えが見出せないから、人を殺しちゃうんでしょうね」と“理解不能”であることを強調しながらも、「チェーンソーを持つシーンや、スナックで大騒ぎしたりするのは楽しかった」と撮影を回想する。「血のりまみれになるのはイベントみたいな感じだったけど、1日となると皮膚呼吸ができなくなってテンションが下がってくるんです」と身ぶり手ぶりを交えて語り、持ち前の明るいキャラクターを垣間見せた。
希代(きだい)の殺人鬼を全身全霊で演じきった尾野だが、「私がどれだけ大きな芝居をしても(演技の整合性を取ってくれて)説得力があった」と10代、20代の過去のフジコを演じた女優たちに感謝を述べる。それぞれの“女優魂”の結晶ともいえる本作だが、尾野は「どの時代のフジコもひどいです。この生きざまを追ってみてほしい。共感しなくていいです。わからなくていいです。でも私は、少しだけ痛みを感じたんです」と視聴者に訴えた。
「フジコ」は、谷村美月、丸山智己、リリー・フランキー、浅田美代子、真野響子が脇を固める。映画「電車男」を手がけた村上正典監督がメガホンをとった。11月13日からHuluおよびJ:COMで全6話を一挙独占配信。
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