ブリランテ・メンドーサ監督、役者に脚本渡さず撮影した「汝が子宮」を語る
2015年10月25日 23:15

[映画.com ニュース] フィリピンの鬼才、ブリランテ・メンドーサ監督が子宝に恵まれない夫婦の第2夫人探しを描いたドラマ「汝が子宮」(2012)が10月25日、東京・六本木ヒルズで開催中の第28回東京国際映画祭「CROSSCUT ASIS #02 熱風!フィリピン」部門で公式上映され、来日中のメンドーサ監督、女優のルビ・ルイス、脚本のヘンリー・ブルゴスがティーチインに出席した。
本作は、「タウィタウィというフィリピン最南端の非常に小さな島」が舞台となっている。メンドーサ監督は、「この島に住んでいる人々はマイノリティで、彼らの文化はフィリピンでもあまり知られていません」と話し、「同じ国ですが今まで訪れたことがない不慣れな場所で、非常にインスパイアされました。ストーリーは考えずに行ったのですが、目からウロコが落ちるような知らない世界で、多くの着想を得ました」と振り返った。
同島は、90%がカトリックであるフィリピンのなか、イスラム教が普及している地域だ。宗教的、文化的風習が異なった土地を映すことで、ブルゴスは「フィリピンの多様性」を見せたかったという。「フィリピンには100以上の島があり、それぞれ異なった風習があるのです。南部は非常に暴力が渦巻いている地域ですが、その中でこの島は平和が保たれていることも示したかったのです」。
物語は、漁業を営む貧しい夫婦が、子どもを産んでもらうため若い第2夫人を迎えようと奮闘する。ブルゴスは「私のアプローチの基本は文化を知ることです。そこにいる人々を知り、起きていることをストーリーに盛り込んでいくのです」と脚本を作り上げた。しかし、脚本が役者陣に渡されることはなく、ルイスは「まず監督がシーンを説明して、役者はそれを理解して演じるのです。自分で理解して演じることによって、創造性の制約がない自由な表現ができました。何を話すべきかという内容は教えてもらいますが、暗記すべきセリフがないのです。セリフの暗記に頼るのではなく、俳優間の化学反応が成り立つ効果的な方法だと思います」と作り上げていった。
メンドーサ監督はノラ・ オーノール、ベンボル・ロコというフィリピン映画界のレジェンドにも同様のアプローチを行った。「ふたりとってはまったく新しいことで、演技というものの概念について考えさせられたのではないでしょうか。なぜこういた手法をとるのかというと、脚本は一番大事なものと言えますが、脚本を渡さないことで自然な演技ができるからです」と持論を展開した。
会場に集まったファンからは多くの質問が寄せられた。カメラなど撮影手法について問われると、メンドーサ監督は「どういった撮り方をするかということは、シーンが語らんとすることに耳を傾けることだと思います。内容が形式より必要なことであって、どう撮るかということに重きが置かれるべきではないと思います」と持論を展開。そして、「フィックスで撮るということは、じっくりと待って何が起こるか見守りたいということ。みなさんにも同じことを体験してほしいのです。手持ちの場合は、キャラクターが何かを発見するように、その環境をみなさんにも発見してほしい。このように使い分けています」と解説した。
第28回東京国際映画祭は、31日まで開催。
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