黒澤明監督「乱」4Kデジタルで30年ぶり復活、仲代達矢「時空を超えて素晴らしい」
2015年10月25日 19:55

[映画.com ニュース] 黒澤明監督の「乱」が公開から30年の節目に4Kデジタル復元版としてよみがえり、10月25日、第28回東京国際映画祭の「Japan Classics」部門でお披露目された。上映後には主演の仲代達矢、原田美枝子らによるシンポジウムが行われた。
シェークスピアの「リア王」をベースに毛利3兄弟の骨肉の争いを描く、製作費27億円を投じた壮大な戦国絵巻。映画祭の第1回のオープニングも飾っており、仲代は「当時私は49歳だった。天才・黒澤は、時空を超えて素晴らしいとつくづく思った」と万感の思いで語った。
当初は仏資本で製作される予定だったがとん挫するなどさまざまな困難に局面し、クランクインも予定より半年ほど順延。黒澤監督の前作「影武者」撮影中に落馬で負傷し10日ほど休んだ苦い経験のある仲代は、「その半年間は毎日、馬の稽古をした。流鏑馬(やぶさめ)までできるようになった。でも、映っていたのは3秒でしたね」とジョーク交じりに話し笑わせた。
他にも4時間かかるメイクを終えた直後に、黒澤監督が二日酔いを理由に急きょ撮影を休みにして憤ったエピソードなども披露。炎上する城の階段を下りるクライマックスシーンでは、「リハーサルだけで1週間。先生(黒澤監督)から、『こけないでね、失敗すると4億円の損だよ』と言われ、本番では口の中で4億円、4億円と唱えていた。随分怒られましたし苦労は多かったけれど、いい仕事をしたと思っている」と満足げに振り返った。
ヒロインの楓の方役に抜てきされ、黒澤組に初参加した原田は「まだ弱冠25歳で、黒澤監督はちょっと見られただけで震え上がるほどの大きな存在。命懸けでした。直接怒られたことはないけれど、強迫観念に駆られ毎日怒られる夢を見ていた」と述懐。だが、すべてのシーンが終了した直後に、「黒澤監督が『もう僕の夢を見ないでね』とおっしゃってくださったんです」と亡き巨匠に思いをはせていた。
この日はほかに、同作でアカデミー賞衣装賞を受賞したワダ・エミさん、記録係として黒澤監督を支え続けた野上照代さん、助監督を務めたビットリオ・ダッレ・オーレも出席した。
第28回東京国際映画祭は10月31日まで開催される。
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