唐沢寿明&小雪、リトアニアで“命のビザ”発給した杉原千畝の足跡たどる
2015年10月22日 04:00
[映画.com ニュース]俳優の唐沢寿明が10月12日(現地時間)、主演作「杉原千畝 スギハラチウネ」の舞台となったリトアニア・カウナスを共演の小雪、チェリン・グラック監督とともに訪れた。第2次世界大戦時にユダヤ難民を救うためビザを発給し、「日本のシンドラー」として知られる故杉原千畝氏。3人は、杉原氏が執務にあたった領事館(現・杉原記念館)をはじめ、ホテルメトロポリス、カウナス駅で杉原氏の足跡をたどった。天候に恵まれ空に虹がかかると、唐沢は「杉原さんが応援してくれているのでは」と笑顔を浮かべていた。
1940年、杉原氏は領事館閉鎖後も滞在先のホテルメトロポリスのロビー、カウナス駅構内でビザを発給し続けた。リトアニアでは、杉原氏の名前が通りや公園の名称となっているほか、中学校の教科書に登場するなど若い世代にも知られている。40年9月4日に杉原氏がリトアニアを発ったといわれていることから、今年9月4日に75周年を記念するプレートがホテルメトロポリス、カウナス駅に掲出された。
当時のまま現存するホテルに足を踏み入れた唐沢は、「ここでやっていたんだな。いまだにプレートがつくられるということはすごいこと。(杉原氏は)何か返ってくることを望んでやったわけじゃない。これを機に、日本の人に知ってもらうという意味で良かった」と感慨深げに語った。
旅路の締めくくりとして、唐沢らは杉原記念館を訪問。壁には、当時飾られていた日の丸が今も残されている。唐沢は、危険な状況下で信念を貫いた杉原氏の行動力に感嘆し「(当時の日ソ、日独関係のなか)相当な勇気、覚悟がいることなのでは。普通の人では絶対できないと思います。子どもがいれば奥さんもいて、自分のキャリアを捨てることになるわけですし」と思いを馳せた。小雪も「(ポーランドの)ワルシャワで撮ったのですが、セットと通じるものがあって、やっとここにくることができたんだなと感じます。改めて千畝さんの功績を感じられ、来た甲斐がありました」としみじみとした表情を浮かべた。
今年、終戦70年を迎えた。唐沢は、杉原氏の名前を広く知ってもらいたいと言い、「戦争は71年目だろうが72年目だろうが起こってはいけないこと。杉原さんのことも知ってもらえるいいチャンスだと思います」とアピール。一方の小雪は「日本を出た人だから、いろいろな意味で日本人としての立場、日本という国を客観的に見られていたんだと思います。千畝さんの志の高さや外に出て行った人たちの見聞の広め方は、日本にいる人たちより崇高だったのでは」と持論を展開した。
唐沢も「小雪がすごく面白いのは、日本にいると海外で経験したことを言うけれど、ポーランドロケでは日本人として意識して立っているんです」と小雪の姿勢に触れ、「千畝さんも僕もそうなのですが、日本から一歩出ると日本人であることを意識せざるを得ないんですよ。それってすごく大事ですよね、僕らも外国人だから」。小雪は「海外で暮らしている人ほど自覚の意識レベルが高いんのではないかということは、千畝さんの作品に携われたことで改めて感じました。戦争や時代の流れについて学ぶきっかけになってくれたら、この映画を作った甲斐があるかな。日本も豊かすぎて豊かでなくなっているから、もう少し生きることを大切にできるようになっていかないといけないなって」と真しな眼差しをのぞかせた。
「杉原千畝 スギハラチウネ」は、12月5日から全国で公開。