「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」新星G・ウエアリングと監督が師弟関係を語る
2015年9月10日 21:40
[映画.com ニュース] ダスティン・ホフマン主演作「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」で、たぐいまれな歌の才能を持つ少年を演じた新星ギャレット・ウエアリングと、フランソワ・ジラール監督が来日し、映画で描かれた師弟関係や名優たちとの共演について語った。
映画は、複雑な家庭環境に育った少年ステットが、音楽教師カーベルとの出会いにより自らの人生を切り開いていく様子を描く。乱暴でトラブルばかり起こすステットは、母の事故死を機に、全寮制で厳格な少年聖歌隊のある有名校に入学する。異質な存在ゆえにいじめにあうが、カーベルの厳しい指導の下、次第に歌うことに喜びを感じていく。
ジラール監督は、美しい歌で紡いだ物語のなかに「少年が、暗い背景から先生との出会いによって明るい未来が開けるという師弟関係を描いている」という。「これは現代の私たちの社会でどんどん減ってきてしまっているものだと思うんだ。自分にもあんな先生がいたら……と思って見てもらえるんじゃないかな」
そんなジラール監督とウエアリングは、劇中のカーベルとステットさながらの師弟関係で結ばれているようだ。ジラール監督は、ステット役を見つけるため膨大な数のオーディションを行い、長編映画初出演のウエアリングを抜てきした。「ベストアクターだった」と言い切り、「孤立や孤独を表現できる役者でなければいけなかった。内面性が備わっていて、外には見えなくても、中で起こっていることを感じさせる。その能力を彼に見出したよ」と大絶賛する。
「僕にとってはチャレンジングな役だったんだ。普通に芝居するだけでも難しいキャラクターなのに、歌も歌わなくちゃいけない。僕は合唱のことは何も知らなかったし、別のオーディションで歌を大失敗したことがあって、もう2度と歌わないと思っていた。でもその殻を破らなきゃと思って前進したんだ。役が決まってからは、アメリカ少年合唱団の皆さんとも一緒に歌わせてもらって、僕にとってはまったく新しい世界だった」
現在14歳のウエアリングは、撮影後に成長期を迎え、身長は177センチに伸びた。「もう子どもじゃないって自覚しているよ。(今作の)ポスターを見て『あれは誰なんだ』って自分でびっくりするくらいだよ」とほほ笑む表情は、ずいぶんと大人びている。無口で寂しげな表情が印象的だった役柄とは対照的に、笑顔を絶やさず話し続ける。「ステットとの共通点は、僕も同じテキサス出身ということくらい(笑)。だからこそ想像力が必要で、難しさはありました。でも監督の助けもあって、ステットがどう感じているのかを見つけられたし、ステットに命を吹き込む作業は面白かったよ」
また、今作に製作段階から関わっていたという主演のホフマンをはじめ、キャシー・ベイツ、デブラ・ウィンガーら経験豊富な俳優たちや、米ドラマ「glee」のアーティ役で知られるテレビスター、ケビン・マクヘイルとの共演も、ウエアリングの糧になった。「キャシーは素晴らしいハグをくれるんだよ!」と満面の笑みを浮かべ、マクヘイルについては「『glee』を見ていたから、『どうして(車椅子の)アーティが歩いているの?』と思ったよ」とファンの顔を見せた。ホフマンには「緊張させる人ではなくて、むしろ安心できるとても優しい人。とてもハッピーにさせてくれるんだ」とあこがれの眼差しを向け、「教えられることは教えてあげようというサービス精神のある人だよ」と名優の人柄を明かした。
ジラール監督は、「いろんな役者さんと仕事をしてきたけれど、こんなに素晴らしいアンサンブルキャストがそろったのは初めてです。ギャレットはこれが初めてだから、『あれは本当に素晴らしかったんだな』と後から思うようになるよ」とキャスティングに胸を張った。
さらに、「ギャレットは長いキャリアを築く大きなポテンシャルを持っている役者」と太鼓判を押すジラール監督。その見通しどおり、来年6月には大ヒットSF映画「インデペンデンス・デイ」(1996)の続編「インデペンデンス・デイ リサージェンス(原題)」の全米公開を控え、始まったばかりのキャリアは順風満帆といえる。「いつかアクション映画に挑戦したい! そのためにトレーニングしているんだ」と目を輝かせ、遠くない将来にやってくるであろうチャンスに備える姿勢は、すでにプロフェッショナルだ。
最後にジラール監督はウエアリングを見つめ、「ギャレットの才能が輝くならどんな作品に出演してもいいと思う。将来どんな方向に進んでいくのか、楽しみに見届けたいんです」と“師”の顔をのぞかせた。
「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」は、9月11日から東京・TOHOシネマズシャンテほか全国で公開。
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