ボリショイ・バレエ団プリンシパル、世界の注目を集めた芸術監督襲撃事件を語る
2015年9月9日 10:00
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[映画.com ニュース]世界3大バレエ団のひとつと言われる、ロシアのボリショイ・バレエ団の裏側に迫ったドキュメンタリー「ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏」が、9月19日から公開される。同バレエ団のプリンシパルを務めるマリーヤ・アレクサンドロワが来日し、作品を語った。
創立から240年に及ぶ栄光の歴史や、美しいパフォーマンスの裏に秘められた、ダンサーたちの努力や才能そして嫉妬や野心とともに、バレエ団の元スターダンサーにして芸術監督のセルゲイ・フィーリンが2013年、覆面の男に襲われ顔面に硫酸をかけられた事件の真相にも真正面から切り込み、事件の背景にあった勢力争いや横領、賄賂といったスキャンダルを暴きだす。
美しい表舞台とバレエ団の闇を同時に映した本作を見た感想を率直に語る。「この映画を見るのは非常に辛かったです。マーク(製作・共同監督のマーク・フランチェッティ)には、もっと“ボリショイ劇場は美しい”という姿を見せてほしかったと思っています。ただ、現実が台本を変えてしまいました。映画自体は本当に真実に近いと思っています。劇場の中での毎日の仕事は、どんなことがあっても絶対に続いていきます。毎日、劇場は開くのですから」
セルゲイ・フィーリンの襲撃事件を知った時はどのような気持ちだったのだろうか。「事件の晩、深夜にニュースでそのことを知ったのですが、とても信じられなくて、間違った情報が流れていると思ったんです。でも、朝になって、すべてがわかって……あまりの、想像を絶する、ことの重大さに驚きました。劇場の中の人々も、まったく信じられない、何をどうしたらいいかわからないという様子でした」
混乱のなかでも、バレエ団は公演を行った。当時の状況をこう振り返る。「公演が終わった後は更衣室でいろいろ……あれはどうだった、これはどうだったというのを話していました。ですが、いちばん恐ろしいことは、劇場の内部ではない、外側の人、関係のない人たちが私たちのことを、良い人と悪い人に分けようとしたことでした」
そして、事件が起こった理由を分析し、「私は、多かれ少なかれ、全員に罪があると思っています。争いが起こるときに気が付かなかった。そのことがよくなかったと。家族だったらギクシャクした関係になるだけで終わりますけれども、この場合はそうはいきませんでした」と持論を語る。
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映画では、アレクサンドロワ自身のケガからの復帰の模様も映されている。プロダンサーとして、見せたくない部分ではあるが、製作陣を信頼し、撮影を許可した。「これは大変リスキーだと自分でも思っていました。この映画が撮られていたのはまだ足の感覚が戻っていなかった時だったのですが、マークさんは絶対に自分のことを裏切らないということがわかっていたので、信じて撮影をしてもらいました」
アレクサンドロワにとって、「私の、人生」というボリショイ・バレエ。世界最高のバレエ団のひとつたる理由は「複雑でドラマティックであるということが言えると思います。私自身、困難が好きですし、ストレスがかかるような場面でも、私はそれを乗り越えることができます。劇場にも似たようなことが言えると思うんです。私イコール劇場であるとは言いませんが、やはり、私はボリショイの一部である、と私自身は感じていて、動き続ける大きな存在というものが人々の尊敬を集めるのだと思います」と語る。
最後に、日本のバレエファン、そして映画の観客へメッセージを寄せた。「私が大好きな親愛なる日本の皆さん、こんにちは。皆さんのことを限りなく愛しています。これからご覧になられる映画は、皆さんが見慣れている美しいバレエの世界とは異なるものでしょう。これは舞台裏のできごとであり、少し悲劇でもあります。それでもやはり現実なのです。ぜひご覧になってください。私たちにとって、とても価値のある新しい視点が皆さんによって見つけられるかもしれません。それは何があっても私たちは現実を生き、将来に向かって進んでいるからです。皆さんを愛しています」
「ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏」は、9月19日からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。
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