「野火」塚本晋也監督、日本への危機感明かす「戦争に傾斜し、突き進んでいる」
2015年7月15日 05:00

[映画.com ニュース] 鬼才・塚本晋也監督の最新作「野火」が7月14日、東京・千代田区の日本外国特派員協会で特別上映され、脚本、編集、撮影、製作、主演を兼ねた塚本監督と出演の森優作が会見した。
大岡昇平氏の同名小説を映画化した本作は、第2次世界大戦末期、敗色濃厚のフィリピン・レイテ島に取り残された日本兵・田村一等兵の壮絶な逃避行を描く。20年以上にわたり構想を温め続けていた塚本監督は、「僕は昭和の真ん中くらいのころに生まれ、戦争は絶対悪というのは当たり前の世の中だった。(構想を得た当時は)普遍的なテーマを豊かに描きたいという思いがありました」と振り返る。それだけに、「(現在の日本は)戦争に傾斜し、突き進んでいるという危機感から、今の時代に作らなければいけないと思った」と作品への強い意志を明かし、「その時点で、近未来への危機感と恐怖があります」と警鐘を鳴らした。
今作ではレイテ島の雄大な自然が目を奪う一方で、戦争に狂わされた人々の暴力描写が、包み隠さず映し出されている。塚本監督は「今度の映画でどうしても大事だったのは、大自然の美しさと、泥んこになって愚かしいことをしている人間のコントラスト。大自然は絶対に欠かせなかった」と話し、「白黒っぽい映像では、どこかで過去にあったことの再現という印象になるんですが、『今現在、目の前で起こっている』という印象にならないといけないので、極彩色のカラーにしました」「近未来にそうなる(戦争状態になる)ことを、皆さんがつくづく嫌だと思うように作ったつもりです」と思いを込めた。
また劇中では、飢餓状態下のカニバリズムにも言及されているが「原作では、人間の肉を食べるか食べないか、神の問題まで持ち出して選択を悩む主人公が描かれています。僕の映画では、原作にかなり忠実に描いていながら、その悩みはあまり描かれていないんです」。その理由を「10年前に戦争体験の方々の話を聞いた時に、食べるか食べないかの選択をするゆとりがないほどに恐ろしい状況になる。理性的なことをとても考えられない状況になるので、そういうシチュエーションになったら、もう食べざるを得ないという体験を聞いていました。むしろ、(人が)そういう風になってしまう戦争はやはり恐ろしい」と苦々しげに説明し、「歴史の一番嫌なところなので、日本に帰ってきた人たちは、そのことをしゃべらないでお墓まで持っていきたいというのはうなずける」と理解を示していた。
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