「フェデリコという不思議な存在」エットレ・スコーラ監督が語る巨匠の横顔
2015年6月26日 09:00

[映画.com ニュース] 映像の魔術師と呼ばれた、イタリアが世界に誇る巨匠フェデリコ・フェリーニ没後20年を機に、巨匠の素顔に迫った映画「フェデリコという不思議な存在」が、6月27日から開催の特集上映「VIVA!イタリアvol.2」で公開する。青年期から実際に親交のあったエットレ・スコーラ監督が、作品と在りし日のフェリーニについて語った。
若きフェリーニは、風刺雑誌の編集部で才能を認められ、漫画を描いていた。スコーラはその編集部に8年後に入社し、ムッソリーニの台頭と戦争を挟みながらも共に机を並べて仕事をした。映画の前半はフェリーニが脚本家として頭角を現していく姿、後半はフェリーニ映画の製作裏話が綴られる。フェリーニの作品と自身の映像も挿入され、巨匠への敬意と愛情にあふれたドキュメンタリードラマ。
本作製作は、フェリーニの没後20年ということで、イスティトゥート・ルーチェ(イタリア映画を国内外でプロモーションする組織)からフェリーニ関連作の編集を頼まれたことがきっかけだった。「自分なら、一種のフェリーニへの手紙、出会った時や一緒に過ごした時間を思い出しながらのメッセージというかたちで考えられると。それで、これを撮った。この作品は実際、映画でもドキュメンタリーでもない、ある友情のポートレートだ」。フェリーニとのあいだに特別な共通点は「残念ながらないね。監督としてはない(笑)。性格的な面や、共通の経験はあるが。映画の撮り方というよりは実人生でね」と振り返る。
ふたりが知り合ったのはスコーラ監督が16歳の頃。雑誌「マルカウレリオ」編集部時代のエピソードは、映画ファンにはとても興味深い。「ああ、皆あの場所を経ていったからね。ユーモア作家も、ジャーナリストも、小説家も皆んな。ただ、時期的には重なっていないが、だが、ザバッティーニも、アキッレ・カンパニーレも。皆、イタリアの大作家は『マルカウレリオ』を通っていった。『マルカウレリオ』はごく重要な雑誌だった。本当に人々の言葉の中に入り込み、言い回しを生み出し、表現やキャラクターを生み出した。“ガガ”や“ジェノべッファ・ラ・ラッキァ”はイタリア人の語彙に加わった。それに読者はその後、雑誌が休刊するとイタリア式喜劇の作家になった彼らを支持した。皆そこで、ステーノも、メッツも、マルケージも、アージェも、スカルペッリも、イタリア式喜劇の作家達は働いていた。そんな経緯で読者は今度は観客になっていったんだ」

夜、ローマをドライブしながら、他人の打ち明け話を聞くのが好きだったフェリーニ。ふたりが夜のローマにくり出すシーンからは、巨匠のインスピレーションの源を感じられる。「運転好きもあったが、それだけじゃなく不眠症に悩む貴族や、浮浪者や、物乞いや、敷石に絵を描く路上画家に会うためでもあった。それをこよなく愛し、それが彼の世界だったんだ」
「フェリーニは根っからの夜のドライバーだった。不眠症のせいもあって、だから誰かしら夜のドライブのお供に友達をさらわなくてはなかった(笑)。ローマを徘徊するのが大好きで。街は昼ではなく夜に知るものだと言っていた。どこかの道に入って、どこに出るともわからず、もしかすると行き止まりで、出口はなく、バックする……それが彼にとってローマを自分のものにする、本当に知るやり方だった。事実、『フェリーニのローマ』や『インテルビスタ』ではより前面に出ている、が、ローマはフェリーニのどの映画の中にもある。リミニが舞台でも、『アマルコルド』や『青春群像』もローマだ。海は常にフレジェーネの海で、アドリア海ではない。リミニはアドリア海沿岸でもね」
車に乗せた娼婦の恋人の話は名作「カビリアの夜」を想起させるが「フェリーニは娼婦から聞いた話を語ったんだ。夜の女がフェリーニにした話を彼が私にして、それで私は、彼女が彼にこの話を、いずれ『カビリアの夜』で使うことになる話をしている場面を撮ったんだ」と明かした。
「Viva! イタリアVOL.2」は6月27日からヒューマントラストシネマ有楽町で開催、その後、7月から名演小劇場、8月からテアトル梅田、以後、京都みなみ会館、神戸元町映画館など全国巡回予定。
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