カンヌ最高賞受賞作「雪の轍」に一般の日本人が出演していた!
2015年6月21日 16:30
[映画.com ニュース] 第67回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞したトルコ人監督ヌリ・ビルゲ・ジェイランの「雪の轍(わだち)」に、俳優ではない日本人2人が出演していたことがわかった。出演者の1人で、当時トルコに留学していた村尾政樹さんが、撮影を振り返った。
映画は文豪チェーホフの著作をモチーフとし、世界遺産カッパドキアのホテルのオーナーで元舞台俳優の主人公アイドゥンと若く美しい妻、そして妹との愛憎、さらに主人公への家賃を滞納する聖職者の一家との不和を描いた作品。
2012~13年に留学していた村尾さんは、カイセリの大学で出会った教授を通じて、ジェイラン監督のスタッフメールでやり取りするようになり、ロケ地であるカッパドキアへ行くことになった。現地に着くまでは不安もあり、「もしかしたら新手の誘拐かもしれないと思った……」と本音をぽろり。撮影クルーに合流し「ジェイラン監督のことを全く知らなかったのですが、世界中からスタッフが集まっていてすごい人なのだと思いました」と語る。
村尾さんは、カッパドキア在住の日本人女性とともに、主人公アイドゥンが営むホテルに滞在する観光客の夫婦を演じた。最初は「ハロー」とひと言話す程度だと聞かされていたが、毎日出番があり、観光客役であること以外は何も伝えられることはなく、台本もリハーサルも一切なし。「では、これから主人公のホテルオーナーと観光客が話しているシーンを撮ります。はい!」と突然撮影が始まり、アドリブで全シーンを演じた。「監督は僕たちに、『とにかく自然にしていてくれればよい』と言っていて、たまにいつからいつまでカメラが回っているか分からないときもありました」と撮影を振り返る。
ジェイラン監督については、「トルコ人にしては寡黙なほうだけれど、気さくな人でした」と印象を述べ、「ちょうど東日本大震災の後だったので、日本のことをとても心配していました」とも。そして、「現場では、本当に主役のハルク・ビルギネルにリードしてもらいました。仲良くなって一緒に写真を撮ったりしましたが、その写真を見せたらトルコ人の友達はものすごく驚いていました。ものすごい大物だったみたいで(笑)」と笑う。
パルムドール受賞は、ジェイラン監督の助手のフェイスブックの投稿で知った。「映画業界には疎いですが、自分が参加した映画が、まさかカンヌ国際映画祭で一番良い賞を取るとは!」と、とにかく驚いたそう。「役者として、将来は大好きな榮倉奈々さんと共演がしたいですね」とジョークを飛ばしながら、「『雪の轍』はとても素敵な映画だと思うので、一人でも多くの方々に知っていただきたいです」と、出演者のひとりとしてアピールした。
「雪の轍」は6月27日から角川シネマ有楽町および新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
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