聴覚障害乗り越え銀幕デビュー 仏新人女優が語る「奇跡のひと マリーとマルグリット」
2015年6月5日 15:00

[映画.com ニュース]視覚と聴覚に障害をもち、三重苦で生まれた実在の女性と、教育係の修道女の交流を描いた仏映画「奇跡のひと マリーとマルグリット」が、6月6日公開する。主人公の少女マリー・ウルタンを演じたのは、自身も聴覚に障害を持つアリアーナ・リボアール。ハンディキャップを乗り越え女優デビューを果たしたリボアールが来日し、撮影を振り返った。
物語の舞台は19世紀末のフランス。生まれつき目も耳も不自由で、一切教育を受けずに育ったマリーが、聴覚障害の少女たちが暮らす修道院にやってくる。マリーは野生児のように獰猛で誰にも心を開こうとしなかったが、不治の病を抱えた修道女マルグリットは、残された人生をかけてマリーを教育し、マリーは言葉を獲得していく。ジャン=ピエール・アメリス監督がメガホンをとり、イザベル・カレがマルグリットを演じた。
盲ろうであるだけでなく、人間的な教育を受けるまで野生児のように生きる少女を演じられる女優を求め、アメリス監督はいくつもの若い聴覚障害者のいる学校をたずねたという。そんな中で、オーディションに“来なかった”少女がリボアールだった。そもそも、演じることに興味はなかったのだろうか。
「学校に貼られていた募集告知が、あまり私の興味をそそる書き方ではなかったの」ときっぱり。そんなリボワールの快活さと強さが、マリー役にぴったりだとアメリス監督は確信したそう。「でも、実際監督に会って作品を紹介してもらって、すぐにこの役を演じたいと思ったわ。シナリオのディテールも気に入ったの」

実在の人物マリー・ウルタンさんを演じるにあたり、スタッフや手話通訳者の協力のもと取材を行った。「ヘレン・ケラーについては知っていたけど、アメリカではなくてフランスにも同じような人がいることを、シナリオを読んで初めて知ったわ。その後、実際に盲ろうあの方に会って、どんな先生がいて、どんなコミュニケーションをとっているのかを学んだの」。そして、役作りについて「私はろうだけれど、そこに目が見えないということを演じるのにあたってたくさんの訓練をしたわ。盲の人の態度や表情には独特のリズムがあるけれど、一度身につけるとそれほど難しくなかった」と振り返る。
生前のウルタンさんは「頑固な人で、自分がこうじゃないと思ったことはちゃんと拒絶する人。怒りを秘めている人で、ちょっと気難しいところのある人だったみたい」と説明、自身との共通点は「人生に対する障害は同じよ。私も自分のやりたいようにやるし、人の言う通りにはならないの(笑)。日や人によって優しくなったり、気が強くなったりするのよ」とおどけた表情で語る。
劇中でマリーの扱いにマルグリットは手を焼くが、このように障害者と健常者との間で対立が起きてしまうのは、「情報が不足しているから」だとリボアールは主張する。「これからどこへ行き、何をするかという単純な情報もわからないと不安になるの。だから私は母に、情報を求め、私が知る権利があることを常に訴えます。マリーも同じような状況だったと思うわ。なぜ学ぶ必要があるかということがわからず、無理やり押し付けられている感覚が耐えられなかったのでは。私たちは弱い立場なので、情報が与えられないと、自信が持てないの。コミュニケーションを円滑にするには、十分な情報が必要なのよ」
質問を投げかけるたびに、豊かな表情とパワフルな手話で詳細に答えようとするリボワール。「私は嗅覚がとっても優れていて、友達が見えなくても遠くから近づいてくるのがわかるし、夜は暗いところで猫のように目が見えるのよ」と自身の障害を補う特殊な能力をうれしそうに明かす。今後も女優業を続ける予定で「以前はろう者向けの教師になろうと思っていたけれど、今ははっきり進む道を変えたわ」と、力強いまなざしで語った。
「奇跡のひと マリーとマルグリット」は6月6日、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開。
(C)2014 - Escazal Films / France 3 Cinema - Rhone-Alpes Cinema
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