ミシェル・アザナビシウス監督、チェチェン紛争扱ったドラマで描く犠牲者の実像
2015年4月23日 14:00
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[映画.com ニュース] 「アーティスト」(2011)で第84回アカデミー賞5冠を達成したミシェル・アザナビシウス監督。モノクロのサイレント映画でいう新鮮さのなか、スター俳優と新星女優の恋を描いた前作から一変、新作「あの日の声を探して」では、チェチェン紛争を題材に戦火を生き抜く人々を見つめた。戦場でひとりになった少年、難民キャンプに出向くも無力さを痛感する女性EU職員、異常な暴力にさらされ心を失っていく青年兵士。アザナビシウス監督は、戦渦で交錯する運命から何を訴えるのか。
フレッド・ジンネマン監督作「山河遥かなり」(1947)を原案に、第2次世界大戦直後のアメリカ占領下のドイツから、ロシアに侵攻された1999年のチェチェンに置き換え、現代社会が抱える国際問題にも光を当てる。アザナビシウス監督は、「アーティスト」で挑んだサイレント映画に続き、本作でも「世間の意表をつくテーマに挑戦したかった」と話す。かねて温めてきた題材ではあるものの、製作資金の確保が障壁となっていたが、「アーティスト」で世界的な成功を収め、難題と向き合った。
「チェチェン紛争は、代表的な国際紛争ではないでしょうか。20万から30万人の民間人の死者を出したと言われており、紛争に対する国際社会の無能さを露呈させてしまった点で、現代の戦争を語るのに最も適していると思ったのです。チェチェン人が虐殺されているにもかかわらず、テロリストなどという侮辱するような評価を受けていることに、違うんじゃないかと物申したい気持ちもありました」
戦争映画ではない――アザナビシウス監督は国際紛争を描きつつ、両親を失った姉弟、少年を救おうとする女性、殺りく兵器と化す青年の運命が交錯するヒューマンドラマとして撮りあげた。「戦争映画をつくるという気持ちはなく、ジャンルにもこだわりはありませんでした。戦争という危機的状況のなか、人間はどう行動するか。1番の関心は人間を描くことだったんです。また、この戦争の犠牲となったのはどういう人たちなんだろう。報道番組では、彼らはエキストラのような不特定多数の人間で、なかなか実像が見えてきません。そこに実像を与えたかったのです」
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実像にたどり着くため、関連書籍、ルポルタージュ、写真の研究に加え、現地やフランス在住のチェチェン人に取材を行い、多方面からリサーチを重ねた。「チェチェン紛争に関してもそうですし、ロシア側のリサーチもしました。それから、トラウマを受けた子どもたちがどのように生きる力を取り戻していくかという再生のプロセスも調査しました。歴史的事実とはなんなのか。ビジュアル的には、どういう映像がリアルなのかということも考えました」と明かす。
再生への一歩を踏み出すライッサとハジの姉弟。ハジとの出会いを通じ、愛を見出すキャロル。ふたつの希望に満ちた物語とは対照的に、ロシアの青年コーリャは戦場で破滅へと向かう。アザナビシウス監督は「特殊な状況に置かれたとき、人がどちらに堕ちていくかは、状況や運命に左右されてしまいます。ただ、コーリャのたどった道に希望はありません。虐殺者に希望はないのです」と情愛、悲哀、狂気が絡み合った結末を導いた。
「あの日の声を探して」は、4月24日から全国で公開。
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