戦場カメラマン・渡部陽一氏、「アメリカン・スナイパー」に自身の経験を重ねる
2015年2月14日 11:30

[映画.com ニュース] 第87回アカデミー賞で6部門にノミネートされ、全米ではクリント・イーストウッド監督作史上最大のヒットを記録している「アメリカン・スナイパー」の特別試写会が都内で開催され、トークショーに戦場カメラマンの渡部陽一氏が出席した。
朝日新聞社・国際報道部デスクの望月洋嗣氏を進行役に、ルワンダ、ソマリア、アフガニスタンほか世界の紛争地域で数々の取材を行ってきた渡部氏がトークを展開。映画で描かれたイラク戦争の激戦地ファルージャでは、2003年3月にアメリカ軍に従軍する形で取材を行ったそうで、現地で目の当たりにした兵士たちの様子を生々しく語った。
劇中では、「米軍史上最強」とうたわれた狙撃手クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)が、危険を顧みず何度もイラク遠征を志願する姿が描かれるが、渡部氏は「一度戦場に足を踏み入れた者は、必ず戻ってくる」という「中毒のような症状」を明かす。「『戦場カメラマンシンドローム』と呼ばれるものがあるように、レバノンでもアフガニスタンでもイラクでも、取材する人の顔ぶれはほぼ重なっている。世界史が目前で動いていく現場を知ると、またそこに戻りたいという衝動に駆られるんです。どの国の、誰であっても、そこから逃れられない」と語った。
また同作が、そうした戦場の狂気を生々しく描いていることを「ハッキリと感じた」と指摘。「作戦遂行中はアイシールドとフル装備で“ロボコップ”のように見える兵士たちが、キャンプに戻れば必要以上に陽気に振る舞ってジョークを飛ばし続ける。気持ちの壊れ方、変化の仕方、プロの兵士であっても狂気に冒されていく様子が(実際に見聞きしたことと)強く重なった」と続けた。
「アメリカン・スナイパー」は、全米ベストセラーとなった自伝を原作に、イラク戦争で160人を射殺した狙撃手クリス・カイルの半生を描くドラマ。渡部氏は「自分自身が立っている場所で、何をすべきなのか、何ができるのか、何をしているのかを考えさせられる。足元を気づかせてくれる映画」と結んだ。2月21日から全国公開。
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